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一番嬉しいのは「無再発」を告げる時

 一方で、言葉は変だが、医療者から見たがん医療の魅力ってなんなんだろう。

「医療には救急医療のような短距離走的なものと、糖尿病とか高血圧みたいなマラソンみたいなものがあって、患者さんとの距離感がいちばん自分に合っているのが、がん医療だったのだと思います」(板橋先生)

 

 もともと医療過疎地の救急医として多忙な日々を送っていた板橋先生だが、腫瘍学の「患者さんと話し合える」点に魅力を感じ、大腸専門のオンコロジスト(腫瘍医)になった。

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「半年ごとの無再発を患者さんに告げるときはやっぱり嬉しいです。僕はこの病院に来て4年なので、来年からやっと卒業生を送り出せるんです」

 一般的に大腸がんは3~6カ月ごとに検診を繰り返し、5年間再発・転移がなければ寛解とされる。だから板橋先生は、何事もなく5年目を迎えられることができた患者さんを送り出すのが楽しみなのだ。

 私もがんが寛解したら、板橋先生や小湊さんと会うこともなくなるだろう。でももし再発したら、またお世話になるかもしれない。

 

 どちらに転んでも悲しみと喜びがごっちゃの、不思議な関係。

 いずれにしても、病院という“非日常”が、がんによって“日常”になった体験は一生忘れない。

写真=末永裕樹/文藝春秋

この記事は、文春オンラインとYahoo!ニュースによる共同企画記事です。悲劇のヒロインみたいにクヨクヨしたいわけじゃない。でも、過剰に前向きもなんかヘン。「がん」を取り巻く微妙な空気になじめない……。2019年2月、自身のホームページで「大腸がん」をカミングアウトした35歳の女性ライター・小泉なつみさんが、日常に現れた「がん」とどう付き合っていけばいいのか、東京で「がん」してる方々に話を聞いていきます。9月3日から4回にわたって配信中です。