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【東京がんストーリー】妻の“がん”を「千載一遇のチャンス」と捉えたライター夫婦

2019/09/10
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取材と治療を通して“病”を体感してきた9カ月

 連載が始まる前、友人にどんな記事にしようかと相談をしたことがありました。すると彼女から出たのはこんな言葉でした。

「私なんてアトピー35年やってっからね」

 付き合い出したハタチのころから彼女がアトピーであることは知っていましたが、特段それについて触れることなく、15年親交を続けてきました。

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 そんな彼女に「“がん”を扱う記事でさ」と話したら、笑いながら返ってきたのが上記の言葉でした。アレルギー反応を気にして、蕎麦は生まれてから一度も口にしたことがないこともこの時はじめて知りました。

 彼女の日常にはずっとアトピーがあって、それと一緒に生きてたんだ。

 15年経って気づかせてもらった瞬間でありました。

 

 そんななか、取材と治療を通して“病”を体感してきた9カ月間でなにが残ったのだろうと考えると、ちょっとだけ共感のハバが広がった、ということに尽きると思います。

 アトピーと“がん”は全然違う病気ですが、少しだけ、前よりも彼女の気持ちに近づけたような気がしています。

 病名がついている病も、そうでないものも、丸ごとひっくるめて、その人自身。もしもそれを打ち明けてくれたなら、「あ、そうなんだ~」と話しあって、共感できたらと思います。

写真=末永裕樹/文藝春秋

この記事は、文春オンラインとYahoo!ニュースによる共同企画記事です。悲劇のヒロインみたいにクヨクヨしたいわけじゃない。でも、過剰に前向きもなんかヘン。「がん」を取り巻く微妙な空気になじめない……。2019年2月、自身のホームページで「大腸がん」をカミングアウトした35歳の女性ライター・小泉なつみさんが、日常に現れた「がん」とどう付き合っていけばいいのか、東京で「がん」してる方々に話を聞いていきます。9月3日から4回にわたって配信中です。

【東京がんストーリー】妻の“がん”を「千載一遇のチャンス」と捉えたライター夫婦

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