文春オンライン

ベビーカーのママに「気を付けろ!!」 子育てのしにくい日本社会に見る、クレームの構造

必ず自分より弱そうで、配慮してくれそうな人を選んで文句を言ってくる

2019/08/22

genre : ライフ, 教育, 社会

もちろん自分の都合で「イラッ☆」とすることもある

 で、地域の住民で騒音やゴミ、植樹がらみや駐車のクレームを町内会やマンションの管理組合に定期的に入れてくる人というのは、見事なまでに独身男性か、すでにお子さんが独立した高齢夫婦あたりが定番なんですよね。なぜかはよく分かりません。

 前述の「昼間の公園で子どもが遊んでいることにクレームを入れてくる高齢者」は典型例ですが、日本社会でいままである程度不文律として通用していた「おたがいさま」という感覚が消えてきてしまっているように感じます。また、都市部では特に海外や田舎にあるような「赤ちゃんはかわいい」「子どもは大事」という感性よりも「そういう存在に自分が妨害されたくない」という都市生活特有の狭量さが、弱い立場である母親に対してクレームを入れるというしょうもない行動に人を駆り立てているのかもしれません。

©iStock.com

自分の都合で「イラッ☆」とすることもある

 もちろん、私も私一人で電車で移動していて、資料を調べたり考え事をしているときに、近くで子どもが騒いでいると「イラッ☆」とするのは事実なんですよね。もしも私がまだ未婚の若いころだったり、実は結婚できなくて子どもが欲しくても子どもがいない状態だったならば、ひょっとしたら「すいません、静かにしてください」ぐらいは言うかもしれません。

ADVERTISEMENT

 でも、子ども4人いて上を下への大騒ぎな日常を送っていると、そのイラつきも「ああ。うちも長男はあのぐらいの年齢のときはもっと騒いでいたな」とか「うちも迷惑を随分かけて子育てしていたな」などと思い返して、怒りが収まるわけですよ。理性ではなく感情として、いつか来た道を思い返すと、一瞬イラついてもスッと醒める。そして「ああ、あのお母さん大変だな」と思ったりする。

 しかし、飛行機のエコノミーで隣に座ったデブが大騒音でイビキかいてると「うるせえ!!」と怒って本人に文句をつけるわけでして、世の中なかなかむつかしいところであります。私もイビキがうるさいと家内に指摘されるので、常備している鼻スースーシールを一枚あげるわけですが。

INFORMATION

 ついにこの日が来てしまった……。文春オンラインの謎連載、特にタイトルがあるわけでもない山本一郎の痛快ビジネス記事が待望の単行本化! 現在、Kindle Unlimitedでも読めます。

2019年5月15日発売!!

 その名も『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』。結婚し、出産に感動するのもつかの間、エクストリーム育児と父父母母介護の修羅を生き抜く著者が贈る、珠玉の特選記事集。どうかご期待ください。

ベビーカーのママに「気を付けろ!!」 子育てのしにくい日本社会に見る、クレームの構造

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー