音楽業界に静かな動揺を与えているコンサートがある。東京芸術劇場で開かれる『ネオ・シンフォニック・ジャズ at 芸劇 2019』がそれだ。ニューヨークを拠点に活動するジャズ作曲家の挾間美帆さんを、構成・作編曲に据えたその妙が話題なのだ。
「100年ほどのジャズの歴史のなかで、ガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』は、長い間、多くの人から愛されてきた名曲だと思います。でも、シンフォニック・ジャズの楽曲は他にもあるし、いまなお生まれ続けています。100年前の定番曲で止めたままにするのではなくて、埋もれてしまった作品に出会える場が必要なんじゃないかと。それで、新旧を象徴するような作曲家の作品を揃えました」
注目のプログラムは、ガーシュウィンの『ガール・クレージー』、クラウス・オガーマン『シンフォニック・ダンス』、ヴィンス・メンドーサ『インプロンプチュ』など。さらに自身の新作も世界初披露する。
「新作は『ラプソディ・イン・ブルー』に代わるような、長く親しまれるものにしたい、そういう思いからピアノ・コンチェルトにしました。ピアノとオーケストラにジャズの即興性がどう融合するのか。楽しみにしていて下さい」
2016年、挾間さんは、アメリカの権威あるジャズ専門誌『ダウンビート』で「ジャズの未来を担う25人」に、また今年4月にはニューズウィーク日本版で「世界が尊敬する日本人100」に選ばれた。
「アメリカ発祥のジャズには、人種差別や文化的要素と切り離せない背景がありますが、日本人の私はその物語(ストーリー)を真正面から背負うことなく入ることができた。楽しいという純粋な気持ちで続けてきたことを、そのように評価していただけたことは幸せです」
東京フィルハーモニー交響楽団を指揮するのは原田慶太楼。そしてジャズ・ピアニストにシャイ・マエストロを招く。皆、アメリカを拠点に大きな存在感と実績を身につけた30代のアーティストだ。
「様々な音楽的要素と融合し、進化を続けたジャズは特にクラシックとの相性がいいと思います。大学でクラシックを、マンハッタン音楽院ではジャズを専攻した私の夢は、多くの人に親しまれる新たなシンフォニック・ジャズを生み出すことでした。それはきっと20年、30年と人生をかけて取り組んでいくのだろうと思っていたんです。ところがこんなにも早く実現してしまいました(笑)。もちろん初めての経験ですから、幕が下りるまでどういうことになるか私にも分かりません。もうワクワクだけです」
若き世代が生み出すシンフォニック・ジャズ・コンサート。Barとおじさん、そんな“定番”とは違うステージになるのは間違いないだろう。
はざまみほ/1986年生まれ。国立音楽大学とマンハッタン音楽院大学院卒業。山下洋輔、NHKドラマなどに作曲作品を、また坂本龍一、鷺巣詩郎、テレビ朝日「題名のない音楽会」などに編曲作品を提供。2012年にメジャーデビューし、自身のジャズ室内楽団「m_unit」で3枚のアルバムを発表している。
INFORMATION
『ネオ・シンフォニック・ジャズ at 芸劇 2019』
8月30日(金)東京芸術劇場
18時開場 19時開演
チケットお問い合せ先:東京芸術劇場ボックスオフィス TEL 0570-010-296
https://www.geigeki.jp/performance/concert183/