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2019/09/03

最初のヒットは……間を抜けていくヒットを打ちたい

――2001年4月2日、シアトルのセーフコ・フィールドで行われるマリナーズと前年度西地区チャンピオン、アスレチックスとの開幕戦。きっとイチローは、トップバッターとしてその名をコールされるに違いない。21世紀、メジャーという未知の領域に足を踏み入れたイチローは、どういうプレイヤーとして進化していくのだろう。メジャーリーガーとしての自分に、彼はどのくらいのイメージを持てているのだろうか。

イチロー どれくらいも持ててない(笑)。だって、まだ踏み入れていないから、まったくイメージできないですよ。年間のイメージすらできない。子どもの時、こうなりたいなって自分で抱いていたのは、田尾(安志)さんぐらいのイメージかな。今は、これは誰って具体的にはないです。ケン・グリフィー? それはやりすぎでしょう。グリフィーはね、メジャーリーグの至宝といわれてる人間ですよ。とんでもないですよ、勘弁してもらいたい。どれぐらいの違いがあるのかといえばね、まぁ、モーリス・グリーンと不破弘樹。だって、日本でトップだったランナーでしょ、不破さんって。(ベン・ジョンソンと胸一つというレースをやったことがあると聞いて)えっ、そうなの? でも、たまにそういうのが出るのはいいでしょう。やっぱりよく似てるじゃない、今の自分に。

 初打席は、二軍から一軍にあがって、初めて平和台球場でバッターボックスに立った時の感覚に似ていると思いますね。何か、フワフワして、地に足が着いてない感じ……最初のヒットは……そうだなぁ、打ちたいな、というヒットは、間を抜けていくヒットです。どっちの間でもいいから。もちろん外野の間ですよ。理想を言えばそうでしょう。ただね、なんか、内野安打になりそうな気がするなぁ。やってみたいピッチャーは……シゲトシ・ハセガワ(エンゼルスの長谷川滋利)かな。ホントに球が速くなっているのかなぁ。わからないけど、あれだけ自信たっぷりに言うんだから速くなっててほしいです(笑)。

©佐貫直哉/文藝春秋

 世界一というのは、今、見ている限りではあくまでもメジャーリーグです。もちろん、個人として、世界一になりたいという意識はありますけどね。今はそんなもの、全然見えてないですよ。でも、一度は行きたいと思いますよね、世界一まで。世界一? それはやっぱり打つことがいちばんおもしろいし、見てる人にもそれがわかりやすいし、それ(首位打者)が理想的だと思います。

 向こうに行くことが夢じゃないですから。はるか、はるか先にありますから……(そのはるか先の夢って?)そんなことは、ちょっと言えないなぁ。どういうプレイヤーかっていうと、そうだなぁ、しなやかな動きのできるプレイヤーかな。しなやかな野球をめざして。どうです、コレ? ……って、結局はイメージ、結構できちゃってるな(笑)。

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 この年、イチローは首位打者、盗塁王を獲得して大活躍、チームをプレイオフに導き、リーグMVPに輝いた。世界が「イチロー」を知った瞬間だった。

2000年の渡米前から、2019年春、引退直後にシアトルで行ったインタビューまで、100時間を超える38本のインタビュー記事は、『イチロー・インタビューズ 激闘の軌跡 2000-2019』に収録されています。

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