近年高まる大型コンテナのニーズ
広い構内を移動するにあたって、今回JR貨物広報室は車を1台用意してくれた。車が構内を走る時、制限速度は時速20キロ以下に設定されている。
ゆっくり進む我々の車の近くを、忙しそうにフォークリフトが走り回っている。
一般的にフォークリフトというと、2本あるL字型のフォークをコンテナの底にあるポケットに差し込み、それを持ち上げて移動する姿を想像するが、このタイプのフォークリフトが荷役できるのは、12フィートか20フィートコンテナに限られる。
それに対して、近年は大型コンテナのニーズが高まっており、31フィートの大型コンテナのニーズも高まっているのだ。
「東京タ」発送実績のコンテナのサイズ別比率を見ると、2014年は12フィートが55.2%、31フィートが32.1%だった。これが2018年になると、12フィートの48.9%に対して、31フィートは36.9%とシェアを伸ばしている。10トントラックと同等の量を積載できる利便性が評価されていることが背景にあるようだが、「大きい」「重い」という鉄道貨物が得意とする荷物が、鉄道によるコンテナ輸送にシフトしてきていることは事実だ。
鷹や鷲が羽を広げて近づいてくるかのような威圧感
一般的な鉄道貨物用の12フィートコンテナが、長さ約3.6メートル、積載容量約19立方メートル、積載重量約5トンなのに対して、31フィートコンテナは、長さ約9メートル、積載容量約48立方メートル、積載重量約14トンにも及ぶ。さすがにこれだけの長大コンテナを通常のフォークリフトでは持ち上げることができない。
そこで、「トップリフター」という、大型コンテナ専用の特殊なフォークリフトが使われる。
これは、港湾荷役で船とコンテナヤードの間でコンテナの積み下ろしをする大型の門型クレーンと同じように、コンテナを「上から吊るす」ように持ち上げて移動するフォークリフト。ガントリークレーンと違うのは、この大きなコンテナを吊り下げたまま、自由自在に動き回れるという点だ。
31フィートコンテナを吊り上げて近づいてくるトップリフターの迫力は半端ではない。鷹や鷲のような大きな鳥が、羽を広げて近づいてくるような威圧感がある。
「小学生の社会科見学などでは、ダントツの一番人気なんですよ」と広報の中村さんは笑って話すが、恐がりの記者などは遠くから眺めるくらいがちょうどいい。なので今回も、車の中から遠望しつつ説明を聞く。
見ていて惚れ惚れする細やかな動き
現在「東京タ」では、下から持ち上げるタイプのフォークリフトが22台、上から吊り下げるトップリフターが10台稼働している。
いずれも見ていると、コンテナを持ち上げたり吊り下げたりしている時は、目の前にコンテナがあるので運転席から前が見づらくなる。それでもすべてのフォークリフトが、1センチのズレもなく貨車にコンテナを積んでいく。それもきびきびと動いて……。
聞けばフォークリフトでのコンテナの積み下ろし技術を競う競技会もあるという。その細やかな動きは見ていて惚れ惚れする。
以前隅田川駅の取材の時に、フォークリフトの運転士に話を聞く機会があったが、決められた時間の中で、間違いなく、確実にコンテナを積み下ろしするには「経験とチームワークが不可欠」と話していたことを思い出した。