これまで鉄道貨物を利用してこなかった企業にも使いやすい設計
そんな「東京タ」で、いま新しい施設の建設が進んでいる。「東京レールゲート」というマルチテナント型大規模物流施設だ。
これまでJR貨物では、貨物駅構内に「エフ・プラザ」という物流施設を展開してきた。これは契約する企業ごとに、その企業の求めに応じた物流施設(倉庫)を貨物駅構内に建設し、貸し出すというものだ。「東京タ」の構内にも11棟のエフ・プラザが稼働中だ。
これに対して現在建設中の東京レールゲートは、先に施設を作って、そこにテナントが入る――というもの。エフ・プラザが戸建ての賃貸住宅なら、レールゲートは賃貸マンションのような位置づけと言えるかもしれない。
「契約企業ごとの希望に合わせた仕様で建設するエフ・プラザは、契約期間が20年と長い反面、退去されると他社への汎用性が低いというネックがありました。その点、レールゲートは、どのフロアも基本的に共通のつくり。契約期間も短いので、これまで鉄道貨物を利用されてこなかった企業にも使いやすい設計です」と語るのは、同社事業開発本部東京レールゲート推進グループの村尾富浩グループリーダー。使う側のメリットについて、こう説明する。
「従来は、お客様の倉庫で荷物をコンテナに入れて、そのコンテナをトラックに乗せて貨物駅まで移動させる必要がありました。しかし、トラックドライバーの減少を背景に、点在している倉庫の集約化を考える企業も増えてきた。集約するなら貨物駅構内に物流拠点を置くことで、輸送にかかる手間と時間とお金を節約することができます」
“貨物駅のエキナカ”のように
施設の設計も、“マルチテナント”を意識している。
「エフ・プラザなどの従来の貨物駅の倉庫施設は、1階にトラックが接車して、建物の内部では貨物をエレベータや垂直搬送機で移動させていましたが、レールゲートはトラックがランプウェイからそのまま各階のお客様のフロアまで入れる設計なので、その点での利便性も高まります」
「東京タ」には2棟のレールゲートを建設する予定だ。現在工事中で2020年完成予定の「東京レールゲートWEST」は7階建てで、貸床面積43,291平方メートル。これから建設が始まる「EAST」は2022年完成予定。地上5階建てで、貸床面積は約137,000平方メートル。
一つの施設の中に複数の企業が入居し、そこで商売をすることもできるレールゲート。同社の真貝康一社長は、「“貨物駅のエキナカ”のように使ってほしい」と提案する。
変わってゆく「物流」という大切な仕組み
前回、隅田川駅を取材した時にも感じたことだが、こうした貨物駅や貨物列車というものは、鉄道マニアでもない限り、普段の日常生活の中で、まず意識することのない存在だ。しかし、その存在がなければ、私たちの生活は簡単に破綻する。
いま、身の回りにあるものの中にも、貨物列車で運ばれて、「東京タ」や隅田川駅を経て、私たちの手に渡ったものは少なくない。
そんな私たちの生活を支える「物流」という大切な仕組みが、私たちの知らないところで急速な変化を遂げようとしているのだ。
写真=山元茂樹/文藝春秋
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