日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)が誇る日本最大の貨物駅・東京貨物ターミナル駅(略称「東京タ」)の潜入ルポ。最終回は同ターミナル内にある「中央研修センター」を見学する。
南北に長い「東京タ」のほぼ中央にある同センターは、本棟と大井機関区の3階、実習棟、車両技術研修棟の4つの建物と、実物の線路と踏切からなる「実習線」の5施設で構成されている。
“貨物女子”も増えている
まずは本棟2階の会議室で同センター副所長の浅井雄吉氏から施設の概略を伺う。
同センターは、それまで同じJRグループの各旅客会社に委託していた運転士養成教育を自社で行う目的で1994年10月に運輸大臣(当時)の指定を受け開設された「動力車操縦者養成所」を母体とする研修施設。現在は運転士養成の他に、車両メンテナンス、保全、駅業務、管理研修など、新入社員研修を含む職能別・階層別教育を行っている。
「新入社員教育は座学と安全行動訓練、無線講習などを含めて約10日間、車両や保全研修などはそれぞれ1~4週間、一方運転士養成研修は学科の4カ月、技能の6カ月と長期間に及びます」と浅井氏。
同社にはここ数年、約200名の新入社員が入社しており、その約1割が女性だ。そこで今年の春、この施設内に24名まで収容できる女性専用の宿泊施設を作った。“貨物女子”は増えているのだ。
取材に入った日は電気機関車運転士研修が行われていた。受講者は2名。教室を覗くと、EF81という電気機関車の電動機についての講義の最中だった。
「回転子の電流の向きが変わると“左手”の関係で力の向きが逆になるので、回転方向に対して反対の力が発生してしまう。中間点には電気を流さないで……」
“左手”とはおそらくフレミングの例のアレのことだと思うが、詳しいことはわからない。
異常発生時の手順や対応を学ぶためのシミュレーター
講師の話に熱心に耳を傾ける二人の研修生。記者も熱心に聞いてみたのだが、講師の話す内容も、黒板に書かれた文字や数字の意味もまるで理解できない。記者の電気機関車の運転士への夢は絶たれた。そこにいても授業の邪魔になるだけなので、這う這うの体で退散する。
次に向かったのは実習棟。ここでは本物の電気機関車を使ったシミュレーターによる訓練が行われる。ただし、このシミュレーターは運転技術を習得するためのものではない。運転中に起き得る事故など異常発生時の手順や対応を学ぶための教材だ。実際の運転技術は本線で、実物の機関車を使って身に付けることになる。
教材機はEF81型電気機関車。昭和40年代から現在まで、日本海側を中心に全国を走ってきた名機だ。側面のパネルが透明になっていて内部の装置が見える。古い例えで恐縮だが「キカイダー」の顔のようなイメージだ。