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「貨物列車は駅でも“分単位”のスケジュールです」物流の最前線で何が起きているのか

ルポ・東京貨物ターミナル #2

2019/08/29

genre : ニュース, 社会,

 東京貨物ターミナル駅(略称「東京タ」)は、東京都品川区八潮にある総面積75万平方メートルのコンテナ専用貨物駅。最大の幅が東西に600メートル、最大延長は南北に3600メートルにも及ぶ。東京にあるもう一つの貨物駅・隅田川駅の全長が1480メートル弱ということを考えると、その長大さがわかる。

南端にある駅本屋の屋上から東京貨物ターミナルを見渡す

輸送量は毎年約103%の伸び

「100年以上の歴史を持つ隅田川駅に対して、ここが開業したのは1973年。歴史が浅いんです。ただ、こちらは最初から“コンテナ専用ターミナル”として設計して作られたので、使い勝手はいいですね」

 と語るのは、駅長(当時)の安田晴彦氏。

 駅の南端にある駅本屋の屋上から見渡すと、遥かかなたまで無数の線路が延びており、その巨大さを実感できる。

東京貨物ターミナル駅の安田晴彦駅長(当時)

「無数」などという適当な表現では申し訳ないので正確に記すと、コンテナホーム5面、コンテナの積み下ろしを行う「荷役線」が10線、本線に出発する、あるいは本線から到着する「着発線」が10線あり、他に12本の「留置線」と10本の「検修線」がある。

 これらの線路は縦に並んでおり、26両編成の貨物列車がタテに2本、余裕をもって“縦列駐車”できるほど長いのだ。

 隅田川駅を見学した時は、周囲に林立する高層マンションに挟まれるように展開する貨物駅――という“異空間”に息をのんだものだが、「東京タ」は、純粋に“広大さ”に圧倒される。JR貨物の社員が70名と、そのグループ会社に所属するフォークリフトの運転士らがやはり70名従事しているのだが、広すぎて人口密度は実際以上に低く感じられる。

 先に触れた通り、近年はトラックドライバーの減少から鉄道貨物を利用する企業が増加傾向にあり、輸送量は毎年約103%の伸びを示している。

「ここから眺めていても、鉄道貨物の勢いが実感できます。特に年末や年度末の繁忙期は、見た目にもコンテナが増えて壮観です」(安田駅長)

ひとたびダイヤが乱れると……

 

「広いなあ」とか、「海が見えるぞ」(目と鼻の先に大井埠頭)とか、「あっ、飛行機だ」(運河を隔てて羽田空港)などとのんきな感想を言っていられるのは、こちらが部外者であることと、この日は特にダイヤの乱れもなかったことによる(天気にも恵まれたし)。

 しかし、ひとたびダイヤが乱れると、駅は大変な忙しさとなる。

「広いとはいえ、毎日70本の列車が発着するのに対して、着発線は10本なので、効率よく列車を出し入れしなければなりません。平常時の列車の動きは作業ダイヤに沿って決められていますが、“異常時”は人間がアタマで考えて作業変更を行わなければならない。しかも、考えるだけでなく、それに応じて現場スタッフには迅速な対応が求められます。

 本線を走る列車が秒単位のダイヤ通りに走っていることはご存知の通りですが、貨物列車は駅にいる時も、やはり“分単位”のスケジュールに乗ってコンテナの積み下ろしが行われています。一人ひとりの社員が、定められた時間内に、所定の貨物を所定の貨車に乗せることで、正確な輸送が実現するのです」(安田駅長)

 ダイヤが混乱している時の貨物駅の作業は、まさに“神業”と言っても過言ではないのだ。