安倍首相の通算在任日数がきょう8月24日で2799日を数え、佐藤栄作を抜いて歴代2位となった。歴代1位は桂太郎の2886日だが、それもこのままいけば今年11月20日には抜くことになる。なお、連続在任日数では佐藤栄作が1位で、安倍首相がこれを抜くとすれば、来年8月24日に達成する。

 安倍首相は2018年の自民党総裁選で3選を果たし、任期を2021年9月まで延ばした。自民党の党則では連続4選は禁じられており、首相本人も次の総裁選への出馬を否定しているものの、自民支持層には党則を変えて続投を望む向きも多い。今年4月に産経新聞社とFNNが行なった世論調査では、自民支持層の過半数が続投に賛成と答えている(※1)。ただし、任期が延びれば延びるほど、引き際が難しくなることは、過去に長期政権を担った首相たちが身をもって証明している。ここでは佐藤栄作と、通算在任日数が2616日で歴代5位の吉田茂の例を中心に振り返ってみたい。

2006年9月に戦後生まれ初の内閣総理大臣に(写真は2006年11月) ©AFLO
今年の国会で。8月24日、通算在任日数2799日に ©文藝春秋

(1)佐藤栄作(2798日)の最後「偏向的な新聞は大嫌いなんだ」

 安倍首相の大叔父(祖父で元首相の岸信介の弟)にあたる佐藤栄作は、1964年の東京オリンピック閉幕直後の11月9日に第1次内閣を発足させ、以後、3次にわたって政権を担った。1972年5月15日、在任中の最大の課題であった沖縄返還を実現した佐藤は、これを花道に政権を手放すものと見られていた。だが、退陣を表明したのはそれから1ヵ月あまりが経った6月17日であった。佐藤はこの前日、国鉄運賃値上げ法案と健康保険法改正案が参議院で廃案となったとき、初めて辞職を決意する。周囲には「大事な案件が自分の力で処理できなかったときこそ、やめるべきものさ。政治家とはそういうもんだ」と語ったという(※2)。

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佐藤栄作(自民党本部総裁室)。1968年7月撮影 ©文藝春秋

 退陣表明の記者会見は荒れに荒れた。官邸の会見室に現れた佐藤は、「テレビカメラどこかね」と記者席を見渡すと、「きょうはそういう話だったんだ。新聞記者の諸君とは話(を)しないことになってるから。僕は国民に直接話(を)したいんだ。文字になると違うからね」「偏向的な新聞は大嫌いなんだ。直接国民に話したい。やり直そうや。(記者たちを追い払うように手を振り)帰ってください」と言い放ち、いったん退出した(※3)。