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その上で選手が伸びる瞬間や立ち止まる一瞬を見逃さず、声をかける。その声かけは、選手の心理状態を勘案しながら時、場所、言葉、そして声のトーンまで変えている。中田がこの2年半、寝食も忘れるほど選手に全身全霊を注いできたこともあり、全日本は闘う集団に変貌を遂げつつあった。
東京大学の講義に参加したワケ
だが、中田は選手にかけた自分の言葉が、その選手にとって適切なものだったかどうか一抹の不安を抱いていた。そのため、昨年の世界選手権が終わってすぐ、東京大学EMP(エグゼクティブ・マネジメント・プログラム)を受講。東大の有名教授陣らが、ビジネスエリート25人に講義するこの講座の受講者は、スポーツ界では中田が初めてだった。
「脳が沸騰しそうなほど難しい。でも私は選手の人生を預かっているわけだから、適切な判断をし、最適な言葉をかけてあげたい。それには私自身が全方位的な知識を持つ必要があると思ったんです」
2020年のメダルに向かって着実に歩を進める中田JAPAN。実は中田は、このチームの闘いに壮大な裏テーマも込めていた。
続きは「文藝春秋」9月号に掲載されている「令和の開拓者たち 中田久美」で――。
出典元
【文藝春秋 目次】芥川賞発表 受賞作全文掲載 今村夏子「むらさきのスカートの女」/<特別対談>菅義偉×小泉進次郎/<総力特集>日韓宿命の激突
2019年9月号
2019年8月10日 発売
特別定価1000円(税込)