西川氏はSARの問い合わせをケリー氏にしていた
西川氏は不正な報酬の受け取りを認めたものの、自身の指示は否定した。冒頭のように謝罪した一方で、報道陣に対して次のように語っている。
「(SARについては)グレッグ・ケリー被告ら事務局に一任しており、適切に行われていると認識していた。事務局の運用の仕方に問題があった」
だが、これはケリー氏の証言とは食い違う。
西川氏はケリー氏に対し、「自分はSARを何株分持っているのか」と問い合わせをした上で、秘書室に行使日の変更をさせたという。
「(西川氏は)行使日が過ぎた後、株価が上昇したため、行使日を1週間後にずらせば、相当な儲けが出ると考えたのです」(ケリー氏)
「行使」直後に新居を購入した西川氏
西川氏はSARを行使した2013年度には1億3500万円もの高額報酬を得ている。不正に手を染めてまでさらなる報酬を得ようとしたのはなぜか。
実は同じ頃、西川氏は日産に対して「新しい家を購入してほしい」という依頼を行っている。
「2013年の春ごろ、私にアプローチしてきて、『お金が必要なので、なるべく早く報酬を引き上げてほしい』と言ってきたのですが、その時、会社が不動産を買うことは可能かとも聞いてきました。物件を買ってもらって、月々、日産に返済していくけれど、退職した時は自分が残金を払うのでどうかという提案でした」(ケリー氏)
西川氏の現在の自宅登記簿(渋谷区内、約200平米のマンション)を確認すると、2013年7月に購入している。それまでの自宅は世田谷区の一軒家。つまり、ケリー氏への相談は、渋谷区の新居購入直前に行われたとみられる。
だが、実際には日産が西川氏のために不動産を購入することはなかった。
「SARによって利益を得た後、『会社に不動産を買ってもらいたい』という提案は取り下げられました」(ケリー氏)
ケリー氏は、西川氏がSARで得た利益が、不動産購入の原資となったと認識しているという。
西川氏に日産の再建を担う資格はあるのか。「文藝春秋」7月号に掲載した「西川廣人さんに日産社長の資格はない」では、約3時間に及んだケリー氏のインタビューの全文を公開している。
【文藝春秋 目次】グレッグ・ケリー前代表取締役独占告白 西川に日産社長の資格はない/<男系か女系か>「愛子天皇」大論争/認知症は怖くない
2019年7月号
2019年6月10日 発売
特別定価950円(税込)