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『高校生クイズ』構成作家・矢野了平が語る「優勝できなかった僕が、『99人の壁』の問題を作るまで」

『高校生クイズ』構成作家・矢野了平が語る「優勝できなかった僕が、『99人の壁』の問題を作るまで」

『オールスター感謝祭』の選択肢を4つから3つに変更したワケ

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『オールスター感謝祭』の選択肢を4つから3つに変更したワケ

――工夫されながらリメイクされていくクイズのお話を伺うと、様々なクイズ番組が生まれ、変遷してきた「クイズ史」も興味深いですよね。

矢野 クイズは本当に環境が目まぐるしく変わるんです。『ヘキサゴンⅡ』でのおバカブーム、『平成教育委員会』での教科書クイズブームなど。様々なブームを経る中で、どうしたら視聴者の皆さんがもっと参加しやすいクイズになるか、参加しやすい画面構成になるか、という部分が求められてきた。研究と工夫の連続ですね。

これまで矢野さんが担当されてきた作品の本をご紹介していただきました

――そういう中で今人気のクイズの形式みたいなものはあるんですか?

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矢野 画面に複数題出せるというのも強みです。

――たしかに最近は画面いっぱいにパズルだとか問題が並んでいるクイズ番組を目にしますね。

矢野 視聴者の皆さんが「これ分かる、これ何だっけ……」を自分のリズムで楽しめるんです。あと「1文字だけ見えている」というのも考えてみようと思える大きなキッカケになるんです。

 考えやすくするという意味では『オールスター感謝祭』でも並べ替え問題の選択肢を4つから3つに減らしました。例えば、「(安室奈美恵のCD)売上枚数が多い順に並べて」という問題だったら

 A:CAN YOU CELEBRATE?

 B:Body Feels EXIT

 C:Chase the Chance

 これまでならあと1つ選択肢があったんです。

――選択肢を減らすことで、視聴者の参加率が上がるということですか?

矢野 クイズ番組ってご飯を食べたり、リビングでのんびりしながら見るものですよね。最近はスマホをいじりながら、とか。そんな状況で4択の並び替えだと答えが24通りもあって考えるのが億劫になってしまう。でも3択の並び替えなら答えは6通りしかありませんから、片手間でも楽しめると思うんです。これも時代とともに変わってきたクイズの在り方かもしれません。

 

「毎月22日はショートケーキの日」

――時代によって視聴者の「知識の求められ方」が変わっていくという点で、今は「クイズ番組」がさらに教養番組化しつつありますよね。

矢野 最近はクイズ1問1問についての解説やプチ情報も充実していて、より多くの情報が得られる工夫がされるようになりました。ひと昔前はみんな知らなかったであろう雑学を多くの人が知っていますよ。僕が参加させていただいている『マツコ&有吉 かりそめ天国』という番組で、視聴者の方から「いちご狩りの季節になると、『イチゴは先端の方が甘い』という雑学を必ず聞くんですけど、もう知っています」っていうお便りが来ていたのが印象的です。

――確かに何度も何度も聞く雑学は反応に困りますよね。矢野さんなんてもっとたくさんあるでしょう。

矢野 そのさじ加減が非常に難しくて……。例えば「毎月22日を洋菓子協会がショートケーキの日に定めています。なぜ22日がショートケーキの日なんでしょう?」雑学としては有名なんですが、出してみると意外とみんな知らない。

――え? なんですか……思いつきません……(笑)。

矢野 カレンダーを見ると、22日の上は?

――15……あ、イチゴだ! すごい!

矢野 クイズ作家の苦悩はここに詰まっていたりするんです。雑学クイズとしては手垢がついているけど、情報としてとても面白いネタを、いかに堂々と出せるか。経験を生かして、新たな工夫や演出、新たな切り口を見つけることができるか。それがクイズ番組の放送作家としての大事な仕事の武器かもしれないです。

 

写真=石川啓次/文藝春秋

『高校生クイズ』構成作家・矢野了平が語る「優勝できなかった僕が、『99人の壁』の問題を作るまで」

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