夜。ビノシュさんの自宅へ
8/24
朝8時起床。9時にクリーニングを出し、宿泊しているホテルメゾン・ブレゲの1階のレストランで朝食。今日のオムレツは美味しかった。作っている人が変わったか? 10時半、同じ場所で今回音楽をお願いする、アレクセイ・アイギさんと打ち合わせ。少女が動物園に迷い込んだような賑やかな感じを出したい。あの空間が祝福されるような曲を、と話す。
今日は20時半からジュリエット・ビノシュさんと打ち合わせ。そこへ向けて午後ハネケの『隠された記憶』とキェシロフスキの『トリコロール/青の愛』を観なおす。
夜。ビノシュさんの自宅へ。
『青の愛』の時は音楽はクランクインの前にすべて出来ていた。撮影現場でその音楽を流し、聴きながら演じ、撮った。プールで泳いで、水中から上半身を出す瞬間に頭の中で音楽が鳴るが、あそこもそうか?と聞いたら「そうだ」と。作曲家としての楽譜の持ち方や、音符を目で追う動作とか姿勢はどういった役作りをしたのか?
「サントラを作ってくれた作曲家のところへ行って取材をした」
彼女が抱えている哀しみについては?
「哀しみは考えない。喪失感をここ(胸)に抱える感じ。それは2年前に夫を亡くした女性に脚本を読んでもらった」
ラストシーン。音楽を聴きながら一筋の涙を流す。その後少し微笑むが、脚本には何て書いてあったか覚えているか?
「このシーンは唯一泣くことを許可された」
「笑っているテイクも撮ってほしいというのは、私から提案した」
「その時の役の感情と自分の感情がつながっていれば泣ける……」「役者は役をいろんな側面から分析することが必要」「メソッドも時と場合によっては有効なアプローチの方法だと思う」
「リュミールという人間は人間としてふところで何を必要(need)としているか?」
「それは愛なのか? 富なのか? 本音、建前、環境……何が物語を進めていくのかを考える」
その人間が表面的に何を求めていて(want)、実際は何が必要(need)か、この2つを分けて考えることが演じるうえではとても重要になるという。これは演出するうえでもとても役立つ考え方だ。