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幾江「こん人ばい、おるはこん人が好きだけん、こん人と暮らしたか。理屈じゃなか、そう思うたったい」

(「第15回 あゝ結婚」より)

 四三が結婚することになる、熊本での幼馴染スヤさん。しかし、スヤさんは一度嫁いだ先で、旦那さんを亡くしてしまいます。

 そのまま旦那さんの家に住んでいるスヤですが、義母の幾江に少し遠慮しています。そりゃそうだ、血の繋がりもないのに家に置いてもらっているだけで立場がない。

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©文藝春秋

 そこに、四三が養子としてこの家の婿になり、オリンピック出場に必要な資金を援助してもらう話が立ち上がります。

 結婚したいのオリンピックに行きたいのワガママ放題の四三なのですが、四三を資産家の養子に迎える理由を、スヤがいないところで語るのです。大竹しのぶさんの迫真の演技に思わず落涙シーンです。

「こん人ばい、おるはこん人が好きだけん、こん人と暮らしたか。理屈じゃなか、そう思うたったい。

 家がどうの、商売がどうの、そぎゃん事は知らん。スヤが一番だけん。こん先、おるが生きるとしたら、そら、こん人のためばい!」

「どぎゃんしたら、もういっぺん、スヤを嫁にもらえるか、考えた末の養子縁組ばい。

 おるぁお前さんとは会うた事もなかし、オリンピックがどぎゃん立派なもんかも知らん。

 ばってん、スヤをもらわんなら養子にゃせんけん! こん話はしまいばい!」

 これをうっかり隣の部屋で聞いてしまったスヤさんは、思わず部屋に飛び込み「おがあさあーーん!」と抱きつくんですよね。

 自分のいないところでお義母さんがこれだけ愛してくれていることを語っていたとしたらどうでしょう?

 この男前のところが肥後もっこす! 

 このシーンは忘れられないのですが、その視聴者の「忘れられなさ」を計算したうえで、この後続く第2部での名シーンとも繋がっています。宮藤さん、すごい!