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弥彦「金栗くん、一緒に走るのはストックホルム以来だね」
四三「はははは、競走は初めてばい!」

(「第24回 種まく人」より)

 第1部の最終回。1923年の関東大震災を経て、東京オリンピック招致など不可能となってしまった東京。東日本の震災後、『あまちゃん』で現地の人たちにエールを送った宮藤さんが、『いだてん』でも震災を描き、その後オリンピックを迎えようとしていた東京に生きる人々の逞しさを描いてくれました。

 神宮外苑のバラックを競技場に見立てて、復興運動会を催す四三。そこには嘉納治五郎も、女性競技の啓蒙につとめたシマさんも、第1部の立役者全員集合で、スポーツでひとつになる人々。これだけでも感慨深いシーンなのですが、徒競走で三島天狗、あの三島弥彦が登場! 金栗四三もそこに加わり、一緒に走ることに!

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 弥彦「金栗くん、一緒に走るのはストックホルム以来だね」

 四三「はははは、競走は初めてばい」

 もうこのふたりのバディぶりはたまらん! 男の私でも身悶えるっ!

 見事なラストでした。

 そしてこの回では、震災で行方不明になってしまったシマが、人見絹枝に宛てた手紙が読まれます。人見絹枝はシマにずっと競技者になるよう口説かれていましたが、背の高いことやずば抜けた運動能力で化物扱いされてしまうことを恐れて、文学の世界を志していました。しかし、この手紙をキッカケにはるばる岡山から復興運動会にやってきて、シマの手紙の内容が紹介されるのです。ここだけでも屈指の名シーンなのですが、その後この四三と弥彦の気持ちのよいやりとりがあって、第1部の物語は後ろ向きではなく晴れやかな気持ちで終わります。

人見絹枝 ©文藝春秋

 いろいろ言われたりしているのかもしれませんが、私はこの大河ドラマを楽しく見ています。近現代を大河ドラマでもっとやってほしい。『いだてん』、そういう意味でもすでに歴史に残る傑作だと思います。

 いまからでも間に合うのでぜひみなさんに観てほしいです。