夜の子どもたちは、待機児童にさえなれない
企業主導型保育事業制度は、待機児童対策のために内閣府が主導して2016年に発足した。ところが、待機児童解消を急ぐあまり、申請書類の審査が杜撰になり、補助金を狙った詐欺事件で逮捕者が出たり、必要のない地域に企業主導型保育所が新設されたりと、問題が露呈している。
一方の「どろんこの星」。同園が迎えようとしている子どもたちは、内閣府の想定した企業主導型保育事業制度の対象ではない。彼らは待機児童ではないからだ。
「夜の子どもたちは、待機児童にさえなれないんです」
と言うのは「どろんこの星」の開園準備を進める社会福祉法人・四季の会理事長の天久薫さんだ。
「夜、保育園を必要としている親たちがいることが、待機児童数という見える形では行政に届かない。だから、夜の親子に対しては待機児童対策が講じられてこなかったのです」
四季の会が、中洲から歩いて10分の場所に認可夜間保育園を開園して40年近くになる。朝7時から深夜2時、昼夜合わせて180人の子どもたちを引き受けるどろんこ保育園だ。
あまり知られていないが、日本には認可夜間保育園の制度がある。認可保育園が24時間保育を行うことは可能だ。だが、実際には認可夜間保育園の数は全国にわずか81園。午前0時を超えて深夜保育を行う認可保育園は、全国で30に満たない。
そして、実際には、深夜、保育を必要とする母子を引き受けているのは、ほとんどの場合、認可外保育施設(ベビーホテル)なのである。民間企業や個人経営で成り立っているベビーホテルの保育の内容は、経営者や園長によってばらつきがある。限られた予算で工夫を重ねる良心的な園から、劣悪な環境で預かるだけとしか言えないような施設まで、さまざまだ。
夜の子どもの保育環境の「格差」は、底知れない。