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認可夜間保育園を知らないおかあさんたち

 中洲の親たちとの出会いから生まれたどろんこ保育園は、「親を支える」ことを運営理念に掲げる型破りな保育園である。

 ところが、当初天久さんたちが出会ったような「水商売」で「シングル」の母親は徐々に少なくなっていく。

 水商売の母親が減ったわけではない。

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 認可夜間保育園に預ければ、ベビーホテルより保育料は安いし、預ける環境は格段によくなる。それなのに、なぜ「水商売」の親たちは夜間保育園ではなく、ベビーホテルへと向かうのか。

「おかあさんたちは、認可夜間保育園を知らないんですよ」

夜のどろんこ保育園

 そう話すのは、どろんこ保育園の保育士、須ケ原沙也加さんだ。

 須ケ原さんは、新卒時に1年間、ベビーホテルで夜間保育を担当したときの経験が忘れられない。

「夜の親子は社会からネグレクトされている…」

 困窮状態にあってキャバクラや風俗で働くために子どもを預けにくる母親たちは、一様に無表情で口数が少なく、子どもも情緒が安定しない傾向にあった。手厚い支援が必要な母子がたくさんいるというのに、彼女たちを引き受けているベビーホテルは、人手が足りない。昼間の待機児童の問題と同様に、夜の子どもと母親も、支えられなくては立ち行かない人たちだった。

「夜の親子は社会からネグレクトされていると思いました」

 一方で、天久さんの目の前には気がかりな親子が次々に現れた。「水商売」「シングル」でなくとも、虐待やネグレクトなど、社会的養護すれすれの線で日々を生き延びている親子はいた。特別に園で朝ごはんを食べさせたり、時には自宅に連れ帰ったりと、規格外の支援に追われるようにもなっていた。

 そして今、始まろうとしているのが「どろんこの星」だ。中洲のホステスや飲食店で働く親の子どもを対象に、まずは12人ぐらいからこじんまりと開園する。午後2時から朝4時まで、14時間の保育時間を予定している。

「どろんこの星」は、マミーハウスのある川端商店街から路地に入ったすぐのところにある。

 企業主導型保育事業制度を活用した新しいこれらの「中洲方式」は、リスク要因の多い中で子どもとの生活を生き延びようとしている歓楽街の母親たちを支える保護要因なのである。

写真・三宅玲子

真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園

三宅 玲子

文藝春秋

2019年9月9日 発売