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突然の退任劇……前澤友作は「裏原宿と女性」でZOZOを巨大化させた

始まりは音楽CD通販の小さな会社だった

2019/09/28

 洋服を売るなら、まずは商品を仕入れなくてはならない。CD屋がどうやって洋服の仕入れをするのか。コネクションもノウハウもなかったが、彼らには扱いたいと思う服があった。自分たちが大好きな裏原宿ファッションと呼ばれるカジュアルなスタイルの服だった。カジュアルといっても値段は安くなく、付加価値があるものだ。

裏原宿の人気ブランドを仕入れる

 2000年代前半は、裏原宿ブランドが隆盛を誇っていた。原宿の一角に「裏原宿」と呼ばれる場所があり、そこに小規模なアパレルブランドが密集している。そこで作られたり売られたりする服は、若い男性層に絶大な人気を誇っていた。裏原ブランドの服を着て、クラブに通う。それが当時のお洒落な若い男子の消費パターンだった。

 しかし、当時、通販で売る洋服は付加価値がないものだったり、偽物が多かったりというイメージだった。そのため、最初は前澤氏たちが“うちで扱わせてくれ”と頼みに行っても、門前払いだった。しかし、彼らは諦めずに、地道に裏原のブランドオーナーの元に通い詰めた。

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©iStock.com

 スタートトゥデイの社員は音楽やファッションに詳しいため、ブランドのオーナーたちの話相手として歓迎されるようになっていった。要は「相手の懐に入っていく」という昔ながらのやり方だ。その付き合いの中で信頼関係を築き上げ、人気ブランドの服を仕入れさせてもらえるようになっていった。

 私がZOZOを取材した時に同行した編集者は、メンズファッション誌の編集を経験していた。その編集者は、ZOZOが扱うブランドの一覧を見て、「よくこのブランドが商品を卸しましたね」と驚きの声をあげていた。

 その頃、裏原の人気ブランドの新商品発売日には、徹夜で客が並ぶこともあったが、そういった商品をネットで買えてしまうのだ。若い洋服マニアの男性たちからすると、それはもう革命だった。

女性社員の活躍で日本最大のファッションメディアに

 付加価値がある商品を扱ったことで、スタートトゥデイは売り上げを伸ばしていく。そして、2004年にはファッションのネットショッピングモール『ZOZOTOWN』を開始。徐々に女性向けのファッションの扱いを増やしていくことで、規模が拡大していく。やはり、ファッションは女性の方が市場が圧倒的に大きいからだ。

 この『ZOZOTOWN』では、若いスタッフたちに自由にセレクトショップを作らせていた。セレクトショップをリアルで出店するには多額の費用がかかるが、ネット上ならそうではない。低予算でいろんな試みができた。その中で女性社員たちも増えていき、彼女たちはその才覚を発揮していく。

2023年には民間人初の月周回計画も予定している ©getty

 そして、若い社員たちが作るセレクトショップの集合体は、影響力あるメディアとして成長していった。若者は洋服を見ているだけでも楽しくなる。だからファッション誌は存在するわけだが、それを『ZOZOTOWN』はネットで展開したのだ。