そもそもなぜZOZOはここまで巨大になったのか。
ヤフーがZOZOを買収し、前澤友作社長が退任することが発表され、大きなニュースとなった。ZOZOというと、前澤氏の女性タレントとの交際や、美術品収集、月旅行計画などの本業とは別の話題が注目されてきた。
その一方で、アパレル業界に何の縁もゆかりもなかったミュージシャンの前澤氏が、ZOZOを巨大なファッション企業に成長させていった過程は知られていない。今回はなぜ、小さな音楽CD屋が、洋服を扱うようになり、日本のファッション業界を支配する企業になっていったかを具体的に言及していきたい。
音楽CD通販の小さな会社が始まりだった
2000年代初め、前澤氏が経営する輸入CDの通販企業には、音楽マニアの青年たちが集まっていた。音楽といえばクラブカルチャーと親和性があり、クラブに通う若者たちはファッションも大好きだ。前澤氏の部下たちは音楽好きであると同時に洋服マニアでもあった。彼らは自分たちが好きな音楽CDを売っていたが、どうせなら、好きな服も売りたいと思い立ったのだ。
一方で、当時の日本では、お洒落度が高い洋服をネットで買う文化はなかった。
なぜか。それは既存のブランドや小売店が「洋服は店舗で試着して買うものだからネット通販では売れない」と判断していたからだ。
大手セレクトショップ、ユナイテッドアローズの重松理名誉会長はこう話す。
「われわれがEC(ネット通販)の可能性を考え始めたのは1995年くらいから。5年ほど研究した結果、最終的にやらないと決めた。洋服は着てみないとわからないので、ECでは難しいというのが私の実感だった」(2017年9月23日号「週刊東洋経済プラス」)
「店で見た服を後から買う」という革命
しかし、前澤氏や彼の部下たちは違う視点を持っていた。それは消費者としての目線だ。
たとえばだ。洋服を買おうと思い、半日かけて、原宿、渋谷、新宿と回る。全部見た後に、『最初の店で見たあの服が一番よかった。あれを買いたい』と思っても、最初の店に戻るのは面倒である。そういう時に後から通販で買えたら便利だと考えたのだ。
今は店で見て試着した服を後からネットで買うことができるが、当時はそれができなかった。この「店で見た服を後から買う」という利便性を日本で広めたのが、前澤氏が経営するスタートトゥデイ(現ZOZO)だった。