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ノーサイドのホイッスルが響いたあとの光景に、胸があつくなった

 韓国出身の具、ニュージーランド出身のトンプソンルーク、リーチマイケル、オーストラリア出身のジェームス・ムーア、南アフリカ出身のピーター・ラブスカフニ、そして稲垣啓太、堀江翔太、姫野和樹が組んだスクラムが、ルーツや文化の壁をこえた「結束」の象徴のように思えたのである。

 勝利だけが心を打ったのではない。ノーサイドのホイッスルが響いたあとのシーンだ。アイルランドの選手たちは客席にあいさつすると2列に並んで、ピッチを去ろうとする日本代表を賞賛の拍手で送り出したのだ。「尊重」を体現する光景に、胸があつくなった。

アイルランド代表の選手たちから拍手が ©共同通信社

 アイルランド代表の姿によみがえったのが、元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗の言葉である。やはり前回W杯の南アフリカ戦でも南アフリカの選手たちは、日本の勝利を祝福してくれたという。

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「彼らも悔しかったはずです。でも、悔しがる前に笑顔でぼくらを『おめでとう』とたたえて、握手を求めてくれた。こんなにすばらしいスポーツはないな、と思ったんです」

元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗 ©文藝春秋

 熱戦はまだまだ続く。ラグビーの魅力は、プレーだけではない。W杯を機に、ラグビーというスポーツが培ってきた文化をたくさんの人に知ってほしい。

©JMPA