ミリ単位で修正したスクラム
――他の国はどうなんですか?
「例えばヨーロッパだと各選手が所属するプロクラブの試合がまずあって、代表の試合はそこに挟まってくる。だから国代表で行動している時間は日本よりも短いですね。
日本は今年W杯の自国開催が決まっていましたから、とくにこの10年間は代表が活動しやすいように予定を組んで、強化にものすごく時間をかけてきたんです」
――そういえば、アイルランド戦ではスクラムで優位に立てたのが大きかったと思います。
「これもしっかり練習時間をかけた成果です。長谷川慎コーチのもと、8人で組むスクラムをずーっと研究して、磨いてきたんです。スクラムは体重だけでなくて、自分の力がいかに相手に伝わるかが大事なんです。8人、ひとりひとりの細かいルーティン――膝の角度、関節の動き、隣の選手との組み方(バインド)――まで気をつけて、何cm、何mmの単位で調整してきた。精密機械をつくるようにスクラムを組んでいます。そのくらいしっかり練習してきたんです」
――アイルランド戦で勝利の鍵になっていた選手は誰でしょうか?
「個々の名前を挙げれば、松島(幸太朗)、センターのラファエレ(ティモシー)、途中出場だったリーチ(マイケル)……みんな良かったんですけど、ゲームをコントロールしているのはやっぱり、10番スタンドオフの田村優。
ラグビーは混沌とした状況がずっと続きますが、そのぐちゃぐちゃしたなかで、次にゲームがどうなるかを読む。田村はその『読み』も優れているし、司令塔として判断してから選択するパス、キックも正確ですから」
――アイルランド戦での田村選手のポイントは?
「前半からあまりボールを蹴らずに、きちんとつないでいました。どんどんボールを動かしたことで、それに合わせて走らされたアイルランドの選手たちに疲れが見えた。そういう風にゲームプランを遂行する中心にいたのが田村です。
じつは田村は初戦ロシア戦ですごく緊張していて、『この時間が早く終わって欲しかった』と本人が言うくらい良いプレーが出来なかったので、しっかり挽回してくれました」
――初の8強入りを目指して、サモア戦(世界ランク16位)、スコットランド戦(同8位)が控えています。
「まずはサモア戦ですね。サモアは個々の能力が非常に高いので、ちょっとでもスキを見せると簡単にトライを取ってきます。ただしアイルランド戦のようにしっかりスペースを消すディフェンスが出来れば大丈夫です。
このあと2つの試合を油断せず、100%以上の力を出して、前回叶わなかった8強入りを決めて欲しいと思います」