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国民医療費は膨らみ続けているが……

 それに、実は花粉症薬をめぐっては、もう一つ問題があります。この8月末、企業の健康保険組合で構成する「健康保険組合連合会(健保連)」が、スイッチOTCの花粉症薬を医療保険から外して全額自己負担にすべきだという提言をしたのです。

 現在、スイッチOTCの花粉症薬はドラッグストアで買えるだけでなく、医療機関で医師の処方箋をもらえば、保険で手に入れることができます。働き盛りの世代なら3割負担ですから、「薬代」だけ見ればドラッグストアで買うより「お得」です(ただし、医療機関にかかれば初診料や再診料、調剤基本料がかかりますので、健保連はそれらも含めるとドラッグストアで買う方が安いと説明しています)。

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 なぜ、健保連がこのような提言をしたかというと、国民医療費が膨らみ続けて、医療保険財政の破たんが懸念されているからです。ちょうど9月末、厚生労働省が2018年度の概算医療費を発表しましたが、2年連続の増加で過去最高の42・6兆円となりました。

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税制はわかりやすく、納得できるものであるべき

 日本は医療保険制度が維持されているので気づきにくいかもしれませんが、この莫大なお金は、すべて私たち自身の財布から出ています(給料などから引かれる保険料、医療機関で支払う自己負担金、社会保障費からの補てんなど)。

 近年は、がんの免疫治療薬として有名な「オプジーボ」や、白血病や悪性リンパ腫の治療薬「キムリア」など高額な薬が次々に登場し、薬剤費の高騰が問題視されています。そのため、少しでも医療費を節約するために、「ドラッグストアで買える薬は、みなさん自腹で買ってください」ということなのです。

 ちなみに健保連は、もし花粉症薬をすべて保険から外せば、年間で約600億円ひねり出せるとソロバンをはじいており、これによって高額薬の財源をかなり賄えると主張しています。一方、日本医師会側は「患者が受診を我慢して重症化することも懸念される」などと、健保連の提言に反発しています。

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 日本医師会の抵抗が強くて実現しない可能性もありますが、厚労省や健保連が押し切れば、近い将来、花粉症薬は全額自腹で買うことを強制されるかもしれません。そうなったら、健康食品やサプリメントが8%なのに、花粉症薬が10%というのは、より「納得いかない感」が強くなるのではないでしょうか。

 こうした医薬品の扱いに限らず、今回の消費税の軽減税率導入は、いろんなところで混乱や不満を呼びそうです。もっとシンプルでわかりやすく、納得できる税制に改善していく必要があるのではないでしょうか。

参考)
国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」   
消費税・軽減税率情報Cafe「医薬品、栄養ドリンク、健康食品は軽減税率の対象になる?」
健康保険組合連合会「次期診療報酬改定に向けた政策提言を発表」
・「花粉症薬『保険外し』提言の現実味」(医薬経済2019年9月15日号)ほか