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ベイスターズ、初めての「本拠地CS」の恐さ――でも「今日は勝てる」と割と本気で思える理由

文春野球コラム クライマックス・シリーズ2019

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この7年で僕らもベイスターズも変わった

 そうだった。すずき君は2年前に同じ熱烈なベイスターズファンの女の子と結婚していたのだ。そりゃ7年も経てば状況は変わるのも当たり前。それは、他の50人の人たちも同じである。たとえば、主婦の佐久間さんは、7年前小学5年生だった息子にねだられてチケットを購入したのに、高校生になった今「母さんと行くわけねえだろ恥ずかしい」とご無体にも断られているし、当時恋人と一緒に観にきていたという福岡から来た男性は、5年前に破局して福岡へ転勤。彼女は別の男性と結婚していたため、一人で5年ぶりのハマスタにやってきては、巨大戦艦みたいになったハマスタを見て浦島太郎のような衝撃を受けたとか。

チケット購入者全員での集合写真 画像提供/ベイスターズおじさん

 7年は短いようで長い。ベイスターズとて、球場も観客動員も勝ち星なんて目に見えてわかりやすいものから、そうでない感情的なものまで7年でいろんなものが変わった。

 就任当初は「横浜DeNAベイスターズは小さな巨人じゃねえか!」と反発した高田GM-中畑監督体制は、今やチームの礎を作った功労者として讃えられ、『プロ野球で売名してさっさと球団を移転させて売り払ってしまうと専ら噂の謎のIT企業モガベー』は、横浜という地域に根を張り、球界に新しい風を吹き込むベイスターズの親会社『DeNA』として世間に認識されるようになった。

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 “夢”だと定義していたCSだって、いまや越えられる壁になっているのだ。今『真・熱いぜチケット』なんて企画チケットを売り出しても“現実”になってしまい成立はしないだろう。

 12球団で一番最後にCSに出場したベイスターズは、これまで常に挑戦者の立場であり、後のないアウェーの戦いばかりをしてきた。それが今回は2位とはいえ本拠地に迎える立場なのだ。甲子園の最終戦、6連勝でCSを決めた阪神が「行くぜ横浜!」と猛っている。

「はじめて恐さを感じた。2位だ。本拠地だ。勝てる、勝たなきゃ、ワクワクしていた今までのCSとは違う。なんだこれ。後のない一戦必勝のような感じじゃなくなっている。強くなるってこういうことなのか?」

 そんな思春期の中学生みたいなことを40がらみの友人が言う。なんて不憫なのだろう。ピュアすぎて泣けてくる。大人の階段を昇っている今の君はシンデレラなのだよ。もう暗黒の言葉も言い訳にならない。みんなそうやって、立派な大人のチームになっていくの。

 負けたら終わりの今日の阪神戦。あんなショッキングな敗戦の後だけど、それでも今日は勝てるんじゃないかって割と本気で思っている。それは、この7年のうちに一番変わったことなのかもしれない。中畑清の諦めない思いと、ラミレスの(昨日は負けたけど)なんやかんやでCSで結果を残してきた手腕。土壇場で豪快にひっくり返されもするけど、同じぐらいひっくり返してきた選手たちの記憶がそう思わしてくれているのだろう。

 ああ。もう夜が明けてしまった。数時間後にはプレーボールだ。青く染まったハマスタでのクライマックスシリーズ、それは夢か現か。いいともいいとも、いいともろーイズアナザーデイ。お昼休みじゃなくても、ウキウキウォッチングになるしかないのですよ、僕らは。

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