心臓は“ピンポイント”で「ここが痛い」とはなりにくい
逆に、薬を使ってもなお症状が治まらないときは、メンタルの問題が疑われる。精神科や心療内科などとの連携が必要になってくる。
神原医師は、「心臓に不安があるなら、安心するためにも一度は検査を受けるべき」というが、受診前に、その痛みが狭心症や心筋梗塞によるものか、あるいは心臓に差し迫った危険が及んでいない症状なのか、ある程度の見当は付けられるという。
「心臓から脊髄につながる感覚神経は、上半身の様々な個所からの感覚神経も同じ所に集まってきているため、それらを区別することが困難になります。胃潰瘍や逆流性食道炎、胆石症など、専門家でも心筋梗塞や狭心症と紛らわしい症状がでます。これら内臓の痛みはピンポイントで『ここが痛い』と指をさせるような痛みにはなりにくく、どちらかというと胸全体、上半身、胸と肩と腕、のように、症状の出る範囲が広いのが特徴です。逆にピンポイントではっきりとした痛みが出る時は、骨や肋軟骨、肋間筋などの痛みである可能性が高まる。それでも病院では、一番危険な心臓から検査をしていくのがセオリーですが……」
昔から「胸を痛める」「胸を焦がす」「胸が締め付けられる」など、心模様を表現する時には「胸」がよく使われてきた。いにしえの人も、ストレスを受けて、胸痛症候群に苦しむことはあったはずだ。でも、心電図も心エコーもない時代、その不安を解消する手立てはなかった。
現代は様々な検査があり、医師が「ご安心下さい」とまで言ってくれるのだ。Uさんも私たちも、いい時代に生まれてきたものですよ。