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2019/10/14

家から車で15分の距離にある「熊たちの暮らし」

 祖父の代から3代続く猟師の男性は、45年間、ずっとこの山々を舞台に熊猟を続けてきた。祖父の代には、この山は家族が隣人らとともに炭焼きなどで生計を立てていた暮らしの舞台であったが、男性が3歳になったころ、すでに生家はダム湖の底に沈んだという。

「ちょうど、その一本木が立っているところの手前や。一回ダムの水を抜いた時があって、見に来たらあったわ、家の跡。石垣が」

 代々続いてきたという熊猟は冬眠に入る前の秋と、冬眠あけの春に行われてきた。冬の間に巣穴を狙って狩りを行う「穴熊猟」を行う猟師もいたが、猟師が高齢化した現在では巣穴に向かうことはめっぽう少なくなった。「穴を知っている」ということは、猟師にとって大きな財産だった。

春熊猟の終盤。山の植物も芽吹いてきた頃

 私が熊の姿を初めてとらえた時、これまでは遠い存在だった猟師の生き様の一端を共有できたような気がした。加えてそれ以来、奥山にはふつうに熊が生息しているということが実感をもって理解できた。家から車で15分もかからない距離に熊たちの暮らしがある。

住んでいる集落から山を望む

※巻狩 鉄砲を構えて待つ撃手と、声を出したり物を叩いたりしながら獣を撃場へと追いやる勢子(せこ)に分かれてグループで行う狩りの形態。

写真=北川真紀

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