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ゆいレールは車両製造に4年待ち

 沖縄県のゆいレールが、混雑のため2両編成から3両編成にしたいと要望している。なんとか予算を確保し、2022年度から導入できる目途が付いた。しかし、車両メーカーは海外向け車両の生産が終わるまで応じられないと回答し、2023年度になりそうだ。2019年から計画しても4年かかる。モノレールは特殊な車両だから製造ラインも少ないだろうけれども、車両製造期間にはこのくらいの覚悟は必要だ。

 

 そうなると、まずは修繕の可能性を探ることになるだろう。私は、日本の鉄道技術者の実力なら、意外と修繕できてしまうのではないか、と期待している。日本のレール・ガイはやるときはやる。新たな伝説が生まれるだろう。楽観的すぎるけれど。

 しかし、修繕するにしても、工場へ移動させる段取りがある。水が引いたとき、浮いた車両は脱線する。もとのレールの上にきれいに乗ったらマンガのような幸運だ。脱線したら、まずはなんとかして軌道に乗せたい。ジャッキアップするか、クレーンを使うか。クレーンを使うなら、架線を取り外し、車両基地の奥まで入れるように線路を踏み板で囲わなくてはいけない。が、やるしかない。考えあぐねている間に手を動かせだ。これも鉄道職員の奮闘を期待する。お願いします。頑張ってください。

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「はやぶさ」「とき」は応援に行けない

 JR東日本によると、北陸新幹線は長野~飯山間の線路が冠水した。線路の点検と補修を進めているけれども、電源施設に大きな被害があるため、復旧は最短でも2週間かかるという。

 しかも、同区間が復旧しても車両の稼働率は約2/3になる。ならば、他の新幹線車両を応援に寄越せばいいと思うかもしれないけれど、それが簡単ではない。なぜなら、北陸新幹線の電車は、北陸新幹線の環境に合わせた特注品だからだ。山手線の車両が壊れたから京浜東北線の電車を借りよう、というわけにはいかない。

 

 北陸新幹線に限らず、新幹線は交流電力を使う。大都市の在来線は直流電化だけど、新幹線は高電圧で大量に電力を供給できる交流を採用した。そして、家電製品でも対策されているように、東日本と西日本では周波数が異なる。北陸新幹線は東日本エリアと西日本エリアをまたぐため、区間によって周波数が違う。北陸新幹線は、東京~軽井沢間が50Hz、軽井沢駅の先、上越妙高駅までが60Hz、上越妙高駅の先、糸魚川駅まで50Hz、糸魚川駅の先からは60Hzになる。路線の経路と電力境界が入り組んでいるからだ。

 E7系/W7系は、この「電力周波数の変更」に対応した機器を搭載している。しかし、これ以外の新幹線車両は搭載していない。「はやぶさ」のE5系も、「とき」のE2系、E4系はもちろん、「こまち」「つばさ」も、そのままでは北陸新幹線の軽井沢以遠に入線できない。

 電源のほかに、北陸新幹線には急勾配もある。整備新幹線は最大勾配を15パーミル(1kmで30mの高低差)で設計しているけれども、北陸新幹線は高崎駅直後から約30パーミルの急勾配が数十キロ続く。山岳区間の経路を短縮するためだ。この長い勾配区間を下るためには、専用のブレーキ装置が必要だ。