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天皇がたった一度だけ、友人の前で「酔いつぶれた日」

陛下の御学友が語る高校時代からの日々

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遊び心に溢れた陛下の年賀状

 故郷のメルボルンに戻ってからも、陛下とは手紙や年賀状のやりとりがつづきました。手紙は英語で、ご自身が詠まれたユーモラスな短歌の英訳が書かれていたこともあります。

陛下から届いた英語の手紙  封筒には「THE CROWN PRINCE’S HOUSEHOLD」とある。

 陛下の年賀状には、いつも富士山の絵がありました。手作りの版画、消しゴムはんこなど毎年趣向を凝らした富士山です。私が留学中に日本語の読み書きをずいぶん勉強したことはご存知なのに、陛下の年賀状には「今年もよろしく」の「今年」にまで振り仮名があって、お優しい人柄が偲ばれました。私の名前を「安土留宇様」と当て字で書いてこられたこともあります。とても真面目な一方で、そういう遊び心もいつもお持ちでした。

陛下からの年賀状など 手作りの版画や消しゴムはんこなどで趣向がこらされている

東宮御所に置かれていたタバコ

 私は高校卒業後、オーストラリアの大学に籍を置きながら東京外大へ留学しました。再来日した一番の動機は、陛下はじめ皇室の方々とさらに交流を深めたいと思ったからです。

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 陛下とは、頻繁にお目にかかるようになりました。月に1度か2度は東宮御所に招かれた時期もあります。陛下とは、英語でおしゃべりしながら数時間を過ごしました。英語の家庭教師というわけではなく、英語で文通した延長で自然とそうなったのです。

 御所を訪ねるのは、たいていお昼過ぎでした。まず1階の控え室に案内され、そこでしばらく待ちます。テーブルのタバコ入れには、上皇陛下のお印である「榮(えい)」のマークが入ったタバコが入っていました。

東宮御所の控室に置かれていたタバコ