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2019/10/26

駅伝よりマラソンに向いていた理由

 2レース目に走った2016年の防府読売マラソンで初優勝を飾ると、その後も安定した成績を残し2019年の別府大分毎日マラソンで初のサブテン(2時間10分以内の記録)とMGCの出場権を獲得する。これは神野らを抑え、青学大出身者として初のMGC出場権獲得だった。

「社会人になってからは、もちろん練習もしましたけど、結果が出るまでにもっと時間がかかると思っていました。MGC含めてすでに7回マラソンを走ったんですけど、『10回目くらいでようやくサブテンだろうな』と思っていたので。意外と早くマラソンに適応できた感じです」

 

 マラソンは駅伝以上に「自分との戦い」が占める要素が大きい。40km以上の長丁場を、「絶対に行ける」と思い続けて走らなければならないからだ。

 距離が長い分、少しでも「無理かもしれない」という想いが頭をもたげ、心が折れれば走りきることさえ難しくなる。

 だからこそ、橋本はマラソンが自分に向いていたと考えている。

「駅伝を走るときって、すごく周りの選手を見ていたんです。『飛びだしたらついていかなきゃ』とか『仕掛けには反応しなきゃ』とか。でも、マラソンだとあんまりそういうことがないですね。とにかく人に流されずに、自分の走りをする。それで勝てなかったらしょうがない。仮に仕掛けを追わずに負けてしまっても、追わない思考になった自分の弱さだと思えます。他のレースだとそういうミスが納得できないと思うんですけど、マラソンだと『これだけやって来たんだし、負けてもしょうがないか』と思えるんですよね」

 

 勝つのも負けるのも、すべて自分の準備次第。マラソンが持つそんなプレッシャーも、橋本にとっては心地よいものだった。

「大学時代って、もう走る全部が選考レースみたいな感じで、年に何度も調子を合わせないといけなかったんです。ポイント練習も絶対にミスできなかった。それに比べればマラソンは1回くらい練習を設定どおりにできなくても、後から取り返せるし、レースの日程も決まっていて出られなくなることもない。なので僕はマラソンの方が好きですね。逆に大学時代に1年間に何回もピークをあわせないといけなかった経験が、いま活きているとは思いますけど」