千葉ロッテとの相性は?
無論、佐々木はグラウンドを離れれば岩手の漁師町に育った木訥とした17歳の高校生だ。過熱する一方の報道に対し、学校側が取材の機会を制限するのもわからなくもない。だが、プロ野球選手となる以上、佐々木にはメディアの向こう側にいる野球ファンや少年達にメッセージを送る訓練も必要ではなかったか。
それは過剰なまでに佐々木への取材を制限した学校側の功罪だろう。佐々木が自由に自己表現する機会を奪ったようにさえ私には映った。國保監督に対し、「もう少し取材を受けて、報道陣の前で話す訓練をさせた方がいい」とアドバイスした関係者もいたというが、それが活かされることはなかった。
佐々木は交渉権を獲得した千葉ロッテに対する印象を、こう話した。
「(ZOZOマリンスタジアムは)浜風が強いと思う。風には気をつけたいと思います。(井口監督は)日本だけでなくメジャーで活躍したすごい方。高い評価をしていただいて光栄です」
佐々木を指名した球団の多くは、こうした未完の怪物を育成すべく、特別なプログラムを企てていた。千葉ロッテも、地元の病院と協力・連携し、佐々木の育成プランを立てているという。
港町を本拠地とする千葉ロッテと、陸前高田に生まれ、震災後、大船渡の公立校で大切に育てられた佐々木との相性は悪くないのではないだろうか。強いプレッシャーにさらされる巨人や阪神のような球団に身を置くより、岩手で過ごした日々と同様、のびのびと野球に専念できるはずだ。
2年連続のBクラスで、投手陣の整備が急務の千葉ロッテとて、すぐに一軍で活躍できると思っていないだろう。“投げない怪物”から世界に羽ばたけるような真の怪物への進化を期待し、その日をジッと待つ。
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