運命のドラフト会議の結果、 “令和の怪物”こと佐々木朗希投手(大船渡)の交渉権は、ロッテが獲得した。この春の岩手大会から佐々木投手に密着し、ドラフト会議当日も大船渡高校で取材を続けていた、『投げない怪物 佐々木朗希と高校野球の新時代』(小学館)の著者、ノンフィクションライターの柳川悠二氏の特別レポート。
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岩手県立大船渡高校の硬式野球部員や保護者も会場となった大船渡市三陸公民館に詰めかけ、いよいよドラフト中継の準備が整おうかとしていたその時、控え室からトイレに向かう佐々木朗希とすれ違った。
190センチという長身の佐々木の学ラン(学生服)は明らかにサイズが小さく、なんとも窮屈そうにしていた。
ふつう、学生服は成長を見越して、大きめのサイズをオーダーするはずだ。ところが、佐々木自身や家族が想定していた以上に身体が大きく成長し、身長も伸びたのだろう。学生服の丈と袖がその大きな背中には不釣り合いで(まるで短ランを着ているようだった)、細長い足がより際立って見えた。
大船渡に入学して2年半、野球選手としての成長度も、あるいはマスコミの注目度も、本人にはとっては想定していた以上のスピードで進み、膨らんでいったのかもしれない。ベンチ入りした1年夏から球速は150キロに迫り、2年夏には大台を突破。そして、今年4月のU-18高校日本代表の第一次選考合宿の紅白戦で、中日のスカウトのスピードガンが「163キロ」を表示。時の人となった。