韓国日報は、「SNS上のセクシャルハラスメント、容貌への攻撃……毒キノコのように広がる”ジェンダー嫌悪”」(10月16日)と報じ、韓国の通信社「newsis」には、建国大学ユンキム・ジヨン教授のこんなインタビューが掲載された。
「ソルリに向けた悪質リプライの根源には社会が要求する女性性を規定し、これに合わない女性に向けて行う女性嫌悪があるのです。こうした観点からみれば、悪質なリプライは従順ではない若い女性をわたしたち社会が断罪していると分析することができる」(News1、10月17日)
「マーズ」騒ぎで韓国社会の「女性嫌悪」が議論されるように
こうした批判が挙がる背景には韓国で数年前から深刻化している女性嫌悪問題がある。
その萌芽は軍服務が義務とされる男性に与えられていた「軍服務加算点制」(公務員試験などで加算点が与えられていた)が「女性や障害者などの権利を侵害する」として違憲となった1999年に遡る。これに男性からは「苦労して軍隊に行っているのに女性たちがそれを認めない」など声を上げ、大きな論争となり、その頃から「女性嫌悪」がむくむくと大きくなったといわれている。
それ表面化したのは、2015年5月に起きたウイルス性の感染症「マーズ(MERS、中東呼吸器感染症)」騒ぎの際だった。
中東から帰国した男性経由でマーズが韓国に持ち込まれたが、ネットでは、「香港に旅行した20代の女性が持ち込んだ」というフェイクニュースが流れ、拡散。当時、ネットには女性を嫌悪する書き込みがあふれた。
これにフェミニズムに関心がなかった女性たちも大きく反応し、当時話を聞いた30代の女性は、「ネットの書き込みを見て、えっ、女性嫌悪って何? と思っていろいろ調べているうちにフェミニズムについて深く考えるようになりました」と話していた。今ある女性嫌悪と闘うことを標榜する社会運動団体などは、この頃に設立されている。
誹謗中傷を書き込んだ相手への訴訟を検討したことも
警察は16日、ソルリの解剖結果を発表し、「他殺の嫌疑なし」とした。
「そこまで追い込まれる前に悪質リプライなら訴えればいいだろう」
そんな声も数多く聞かれた。
ソルリも生前、誹謗中傷を書き込んだ相手への訴訟を検討したことがあったという。しかし、その相手が自分と同年代だと知り、「同年代を前科者にするのは心苦しい」と取り下げたそうだ。