1ページ目から読む
4/4ページ目
松本清張が「昭和史発掘」で強く断言
松本清張氏の「昭和史発掘」はさらに強く、「石田検事を殺したのは徹頭徹尾『政治』であった。この点、個人的にはなんの遺恨も受けていなかった下山国鉄総裁の場合とまったく同じである。私は、下山事件は、石田基検事の殺害方法が一つの教科書(テキスト)になっているのではないかとさえ思いたくなる」とまで断言。検事の捜査に影の手が伸びたように書いている。しかし、石田検事と下山総裁では事件における立場は全く違う。さらに、陸軍機密費と松島遊郭が政界に与える効果は逆の方向を示しているうえ、石田検事が、当時の政治や社会状況と合わせて2つの事件をどのようにみていたのかは分からない。それで殺害と断定するのはいささか飛躍ではないだろうか。繰り返すが、読み物としては興味深いが。約30年たっていた時点で今回の本編の筆者は「他殺の線を打出すことは木によって魚を求めるようなものではあるまいか」と書いた。さらにそれから60年余り。謎は歴史の闇に隠れてしまったといえそうだ。
本編「石田検事怪死事件」を読む
【参考文献】
▽松本清張「石田検事の怪死」=「昭和史発掘」
▽筒井清忠「昭和戦前期の政党政治」
▽井上寿一「政友会と民政党」
▽筒井清忠「戦前日本のポピュリズム」