文春オンライン

2019/10/26

「“世界一”ブラジルとやりたい」石川祐希の直談判

 選手からすれば、せっかく目の前に強い相手がいるのに戦えないもどかしさがある。確かに翌日のアルゼンチン戦に勝利したことも含め、大会序盤ならば納得はできる。

 ただ、勝てばメダル獲得の可能性が残り、ブラジルも日本に勝利すれば優勝が決まるという大事な戦いが目の前にあるのに、「この先を見据えて」はないだろう。これからにつなげるためにも、今、世界との差がどれほどか。紛れもなく“世界一”と呼ぶに値するブラジルに全力でぶつかりたい。そう直談判したのが石川と、北京五輪に出場したベテランの福澤だった。

 現状のベストメンバーで臨んだブラジル戦。敗れはしたが、総力を尽くす戦いを繰り広げ、実に12年ぶりとなるブラジル戦でのセット奪取につながった。

 何より大きな収穫は、全力でぶつかったからこそ感じた「差」と得られた悔しさ。

 石川はこう言った。

「僕たちのパフォーマンスを安定して出せれば戦えると感じましたが、ブラジルは戦略をしっかりはめてくるし、どの選手もいろんなサーブが当たり前に打てる。そこも1つ差を感じたところですし、自分たちは大事なところでの1本だけでなく、それ以外のミスを減らすことや、取り切る場面で取り切るスキル、メンタルをつけないといけない。強豪相手には、取るべき1本を確実に取らなければ勝てない、と改めて学びました」

こちらはベストオポジットに選出された19歳の西田有志 ©AFLO

「石川は周りにも目を配ったり、声をかけたりするようになった」

 大学時代まではコンディション面に不安が残り、万全の状態で1シーズンを戦い切れたことがなかった。だがプロとなり、食事やトレーニングに対してこれまで以上に高い意識で臨んだ結果、体つきの変化は明らかで、昨季はイタリアセリエAのシエナで全試合にスタメン出場を果たし、より高いレベルで経験も積んだ。

 その成果は、共にプレーする仲間もより強く感じている。中大時代の先輩で、共にプレーし大学のタイトルを総なめにしたセッターの関田が言った。

「周りに対して要求するのは変わりません。でも言う以上はやる、というのが彼の意識として常にあるし、周りにも目を配ったり、声をかけたりするようになった。アタッカーとしての進化は言うまでもない。間違いなく、石川がこのチームの軸で柱です」

 世界を知るコーチの知恵と経験に基づく戦術と、それを遂行できる能力と意志を備えた選手が集い、その中心に柱となるエースがいる。躍進の背景には確固たる理由があった。