文春オンライン

2019/10/26

英語でコミュニケーション――中垣内監督とブランコーチ

 これまでも世界を見据え、さまざまな戦術に取りくんできた。だが、実際に世界を知るブランコーチの指導力や経験がもたらした経験は大きい。選手選考など、時折頑なな部分もあるものの、学閥や所属企業にとらわれず、強くなるためなら忖度なし。プロフェッショナルに徹するブランコーチと、中垣内監督を含めたスタッフ陣が英語でコミュニケーションを取り合い、チームづくりに取り組んできた成果が発揮されているのは間違いない。

中垣内監督(左)とブランコーチ ©AFLO

 躍進の要素はまだある。前回大会でも活躍した主将の柳田将洋や石川祐希に加え、ベストオポジットに選出された19歳の西田有志や、33歳の福澤達哉が見せた献身的なプレー。李や山内晶大に加え、小野寺太志、高橋健太郎といった大型ミドルブロッカーの覚醒。その個性豊かなアタッカー陣の長所を活かすトスを、コート内外を走り回りながら高い精度で供給し続けたセッターの関田誠大の存在など、個の成長も著しい。

 だが、どれだけ高い能力を持つ「個」が揃い、経験豊かな指導者がいても、与えられたものをそのままやるだけという状態では、おそらくこれほど大きな変化はなかったはずだ。

「ベスト8では目標が低すぎる」

 球技の中でも「過去に勝った」という歴史にとらわれ、育成年代においても現在の世界を見据えた指導ではなく、「昔はこうだった」という指導法もまだはびこるバレーボール界。言われたことをやる、が当たり前とされた世界に風穴を開けたのが、エースの石川だ。

 たとえば、チーム発足時のキックオフミーティングの席上。中垣内監督は今年最大のターゲットとするW杯での目標を「ベスト8」に定めた。過去の成績を見れば簡単に「メダル」とは言えない事情も理解できなくはないが、選手からすれば12チーム中でベスト8を目指す、と言われてもモチベーションは高まらない。その席上で「目標が低すぎるのではないか」と指摘したのが石川だった。

 ただワガママではなく、チームのために必要であると思えば、言うべきことは言う。その姿勢はW杯でも変わらない。大会終盤、勝てばまだメダル獲得の可能性が残されていたブラジル戦。ブランコーチは当初、それまで主軸を担った選手ではなく、出場機会の少ない選手を先発させる形を取ろうとした。

 実際に大会前半、4日目のアメリカ戦でも、今大会のメダル獲得の可能性を高めるために、より勝率が高いアルゼンチン戦に照準を合わせるべく、アメリカ戦で西田はベンチアウト、石川も出場機会はなかった。