昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

2019/11/08

藤井さんは他の棋士と全然違うなと思いました

深浦 感想戦のときは、かなりがっかりしていて、話しかけづらい状態でしたね。ソフトだったら自分が1000点から2000点負けているような状態からのことでしたから、藤井さんはショックだったと思います。ああいう負け方は、その時点ではなかったでしょうから。

――やはり対局してみると、藤井聡太独特の強さというのは感じるものですか。

深浦 この叡王戦の前に、AbemaTVさんの番組でも対局していた(非公式戦「藤井聡太四段 炎の七番勝負」。結果は藤井聡太の勝ち)のですが、中盤から終盤、相手玉を詰ますまでのアプローチが他の棋士と全然違うなと思いました。意外な手段から入って自玉が寄せられるまで、今まで感じたことのないものでしたね。

――将棋の内容以外で何か印象に残ったことはありますか。

深浦 あの叡王戦の対局は、将棋会館の5Fの部屋でやっていたんですけど、その部屋は靴を脱いで上がるんですよ。トイレに行くときは自分の靴を履くわけですが、そこにスニーカーがある。あのとき藤井さんは、まだ中学生だったんですよね。将棋会館にある靴って、ほとんど革靴なので、「あぁ、スニーカーなんだ。よく考えたら30歳くらい違うんだなぁ……」と、ちょっと親心が芽生えてしまいました。それで「いけない。いけない」と(笑)。

 

羽生さんを超えていると思いますね

 スニーカーを履いた中学生棋士との激闘を経験した深浦九段は、やはり藤井聡太という棋士には、別格という印象を持っているという。

深浦 デビュー時からよく見ていますが、棋士としてのスタートラインに立ったとき、これだけいろんな能力を備えている人は、過去にいないと思います。詰将棋の力はナンバーワンですし、ソフトを導入した序中盤も隙がありません。そして将棋界では20代の間は伸びるというのが常識なので、まだまだ伸び代がある。これは驚異的なことで、デビュー時などの力を比較しても、羽生さんを超えていると思いますね。

 なお、深浦九段と藤井七段の対局は、前述のAbemaTVの非公式戦と叡王戦、そして66期王座戦挑戦者決定トーナメントの3局がある。公式戦では1勝1敗の五分。次なる対戦が今から楽しみだ。

対局数が物語る「超一流」の証

 81戦33勝48敗。

 これは深浦康市九段側から見た、もうひとりの「将棋星人」羽生善治九段との生涯対戦成績である。

 深浦九段と同じ1991年10月にプロになった豊川孝弘七段は「僕は羽生さんとは1回しか対局したことがない。羽生さんと80局以上指している深浦さんは本当にすごい」と語っていたが、この80局を超える羽生九段との対局数も、深浦九段が超一流である証のひとつといえるだろう。