11月1日、2020年度に始まる大学入学共通テストにおける英語の民間試験の導入について、延期が発表された。
英語の民間試験については、受験料が高額であることや、複数回の受験が可能であることから経済状況に応じて格差が生じてしまうことや、試験会場を民間側で用意することから、地方や離島地域に住む生徒に不利に働くことなどが取りざたされていた。
1日におこなわれた記者会見で、萩生田光一文科相は5年後の2024年度の実施に向けて、試験の仕組みを抜本的に見直すとしている。
2024年度は、学習指導要領改訂後、初の大学入試が実施される年でもある。今回の英語の民間試験の導入の延期の影響と、5年後の展望について、大学受験に詳しい大学通信・常務取締役の安田賢治さんに聞いた。
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一番可哀想なのは今年度の受験生
——今回の報道を受けての感想は。
安田賢治さん(以下、安田) 驚いたのと同時に、やっぱりな、と。全国高等学校長協会から延期と制度見直しを求める要望書が提出されるなど、現場の反発は根強かった。民間の英語試験の利用を予定している大学の一覧も先月末にやっと発表された状況で、来年度からの実施というのに先行きも不透明でした。受験生や、受験指導に当たる先生たちからすれば、「こんな状況では試験対策ができない」という気持ちだったのでは。
——延期による影響を一番受けるのは誰でしょう。
安田 間違いなく、今年度の受験生だと思います。今年度の受験生は、センター試験を最後に受ける人たち。浪人したら、新テストのために対策をし直さなければいけないから、「絶対浪人できない」という思いで安全校を選んでいる受験生が非常に多い。
新テストの中でも、特に対策が大変だと考えられていたのは英語の民間試験のライティングとスピーキング。来年度、英語の民間試験がないと知っていたら、「入れる学校」ではなく「入りたい学校」を受験していたのに……と悔しい思いの受験生が多いはず。浪人のリスクを考え、一般入試から推薦入試等に流れた子たちはすでに願書を出してしまっていますし、一般入試を受ける予定の子たちも、安全校の受験から挑戦校の受験へこれから軌道修正するのは難しい。彼らが一番可哀想ですよ。
5年後の改革も不透明な部分ばかり
——萩生田文科相は会見で、2024年度の英語の民間試験の導入に向けて検討するとしました。2024年度にも、大学入試改革が予定されています。
安田 そうですね。2020年度の大学入試では、センター試験の後継である「大学入学共通テスト」が始まります。今の中学1年生が受けることになる2024年度の大学入試は、10年に1度の学習指導要領改訂後初の大学入試です。