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最優先の「特別儀仗」とはどんな任務?

――先日市ヶ谷駐屯地の第302保安警務中隊も取材したのですが、今一度儀仗について教えてください。

「国賓等の来日や防衛大臣、副大臣などの離着任のさいに行なう儀式ですね。

 特別儀仗の日程は急遽決まることも多い。定期演奏会はできるだけ他の行事などと重ならない日程を選んではいるのですが、特別儀仗は我々だけができる任務ですから最優先です。特別儀仗と重なった場合は、残ったメンバーで演奏会ということになります」

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日越首脳会談での特別儀仗(2017年)。国賓を迎える際、中央音楽隊は第302保安警務中隊とともに特別儀仗を行なう ©時事通信社

――特別儀仗は第302保安警務中隊とともに行うのですよね。その302保安警務中隊と合わせるのは本番当日の朝、と聞いたのですが。 

「そうですね。特別儀仗当日になってはじめて合わせます。ただ、302保安警務中隊と我々は昨日今日の付き合いじゃないですから。先輩から受け継がれてきた関係性というものがあるので、多少の調整はあってもそれほど難しいことではないんです。

 それでも302保安警務中隊も常に特別儀仗に対して進化を続けてきていますから、我々も負けないようにという意識がありますね。音楽の演奏についてはプロですが、保安警務中隊は銃の上げ下げ、行進などキビキビした動きを突き詰めている。それに遅れを取らないように特別儀仗はかなり根をつめた訓練をしています」

植竹1等陸曹は30年以上クラリネットを演奏している

楽器を構える角度もミリ単位で揃える

――302保安警務中隊では銃の構え方ひとつでもミリ単位で揃えるというお話を聞きました。

「それは我々も同じですよ。楽器を構える角度もミリ単位で揃えることができるようにしないといけない。何しろ天皇皇后両陛下や来日された国賓の前で演奏するわけですから、絶対にミスはできない。よく、『人間だからミスはしょうがない』などといいますが、こと特別儀仗に関してはそうじゃない。本当にミスは許されないんです」

 

――となると、中央音楽隊のメンバーの中でもさらに選抜されたメンバーが儀仗を担当するということになるのでしょうか。

「いえ、80名のメンバー誰でも演奏できるような訓練をしています。やはり特別儀仗を行なう場所によって人数も変わってくるのでそれに応じてメンバーを編成して、そこから本番に向けての訓練、という流れですね。日常的にはみな個別で練習していますから、特別儀仗に限らず本番前に参加メンバー全員で合わせるのは数日から1週間程度。民間のオーケストラのコンサートでもひとりひとりが楽譜を完璧に仕上げてきて、数日前からリハーサルで合わせるのが一般的ですからね」