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音大は競争、自衛隊は助け合い

――遅れをとっている人がいても、決して見捨てないということですか。

「『お前はダメだからやめろ』みたいなことはないんです。みんなで引き上げてくれる。私も引き上げてもらった側ですからね(笑)。音大は、やっぱり競争なんですよ。隣のやつよりいかにうまく演奏するか、そればかりやってきました。でも自衛隊に入ってみると、隣に遅れている奴がいるから放っておけ、ではなくて必ず手を差し出す。もちろん競争の部分もありますけどそれだけじゃなくて、組織全員で助け合って任務をこなしていくという考え方が根っこにありますね」

中央音楽隊の指揮者たち。朝霞駐屯地での訓練中

――そういう訓練を経験されると、演奏にこめる思いも変わってくるのではないでしょうか。

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「若いころは自分自分みたいなところもあったんですが、やっぱり聴いてくださる方は千差万別ですから、その人たちに一番届けたい音を出せるようにという気持ちは強くなっていますよね。特別儀仗でも国賓の方の国歌を最初に演奏するのですが、やっぱりそこでは日本の自衛隊としての演奏をしっかり見せられるように。そして被災地に行けば、被災者に寄り添った音を出す。そういう引き出しは増えてきたと感じます」

スウェーデン国防軍のスベルケル・ヨーランソン司令官の来日に伴う特別儀仗。第302保安警務中隊とともに任務にあたる ©時事通信社

各国の軍楽隊が集まる軍楽祭にも参加

――さまざまな国の国歌を演奏する機会も多いと思いますが、国際交流のようなものはありますか。

「各国の軍楽隊が集まる軍楽祭には参加していますね。軍楽祭は各国が軍楽隊の威信をかけてやるものでして、友好国も招待されるんです。我々も自衛隊音楽まつり(自衛隊最大の音楽イベント)では在日米軍など多くの国に参加してもらっています。

 今年は軍楽祭でロシアに行ってきたのですが、やっぱり国は違っても音楽は共通なんだなあと。改めてそれを実感しますね。陸上自衛隊には陸軍分列行進曲というマーチがありますが、マーチひとつとっても各国の特徴が表現されていておもしろいんですよ。ドイツは重々しくて、フランスはちょっとおしゃれで、イタリアは妙に元気な曲調だったりして(笑)」

ロシアで行なわれた軍楽祭での演奏の様子 ©共同通信社

――イタリアが元気な曲というのは容易にイメージできますね。海上自衛隊や航空自衛隊の音楽隊との交流はいかがでしょう。

「海上の東京音楽隊、航空の航空中央音楽隊とは合同コンサートを毎年やっています。ですから互いによく交流していますよ。合同コンサートは全国各地会場を変えてやっているので、地方に行ったら懇親会などをしたり」

――そういうときはどんなお話になるのでしょうか。

「でもやっぱり音楽の話ですよね。あとは『陸自はいいなあ、でもうちもいいんだぜ?』みたいな雑談になりますかね(笑)」