1ページ目から読む
4/4ページ目

民間の指揮者から「これだけピタリと合うのはもう別格だね」

――お話の中に、音楽家としての顔と自衛官としての顔、それぞれ垣間見えるところが陸上自衛隊中央音楽隊の方ならではなんだなと感じます。お話の締め括りに中央音楽隊だからこその音というのはどんなものなのか、教えていただけますか。

「どんな場所でもどんな環境でも演奏できることがひとつ。あとは、揃っているということに関しては負けないと思いますよ。民間の指揮者の方をお招きしたときに、『これだけピタリと合うというのはもう別格だね』と言っていただいたことがあります。それで『本番当日はもうみんな自由に演奏して』とおっしゃって、指揮台に座って演奏を聴いておられた(笑)。まあ、それくらい“何をしていても合う、揃う“という感覚は皆共有しています。放っておいても阿吽の呼吸でできるというか。それは自衛隊の音楽隊らしいところではないでしょうか」

 

――厳しい訓練をみな受けているからこそのもののような気がします。来年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。前回の東京五輪では中央音楽隊が活躍されたと聞きましたが、今回も予定などあるのでしょうか。

ADVERTISEMENT

1964年東京五輪の際に行進する陸上自衛隊音楽隊 ©共同通信社

「今のところはなにも聞いていないんです。でも実際、前回の1964年東京五輪では開会式の行進やメダル授与式の国歌吹奏を我々中央音楽隊が担当しています。今ではメダル授与の際に流れる国歌も生演奏は少なくなっていますが、当時は生演奏が主流でしたからね。どこの国の選手が勝つかわからないから、当時はあらゆる国の国歌を事前に練習していたとか。国歌に関しては儀仗でもいつも演奏させていただいていまして、相手国に失礼のない演奏ができると思います。ですから、ぜひ我々をオリンピックでも活用していただけるとありがたいですね」

1964年東京五輪で中央音楽隊が演奏したトランペット

中央音楽隊の見事なまでに揃った、そして心に響く音色。それは、一般の自衛官とまったく同じ厳しい訓練を経たからこそ出せるものなのだろう。11月10日の即位パレードでも皇居正門前で見事な演奏を行なった。さらに来年2月には東京芸術劇場コンサートホールでの定期演奏会も控えている。民間の他のコンサートとは一味違う“自衛隊の音色”を聴きにでかけてはいかがだろうか。

(全2回の2回目/#1 自衛官だけど“プロの音楽家”――陸上自衛隊「中央音楽隊」を知っていますか?から続く)

写真=佐藤亘/文藝春秋