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「産むんじゃなかった」と言われても「辛いのは自分だけじゃない」と思っていた14歳のころ

2019/11/14
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 父は自殺、母は毒親――。ゲイの男の子が過酷な家庭環境でも生き抜いてきたこられたのは、かけがえのない出会いと愛があったから。おせっかいでも人の悩みを聞いて、一緒に考え、腐らずに立ち向かってみる、そんな「ゲイ風俗のもちぎさん」のルーツが明かされる初の自伝エッセイ『あたいと他の愛』が現在発売中です。もちぎさんの心に刻まれた14歳の初恋。

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 このお話の舞台は、とある地方の中学校よ。

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 そこは今はもう廃校となった小学校と、限界ギリギリの生徒数で保ってる別の小学校の、2つの校区から入学してきた子ども達が通うボロボロの中学校だったわ。

 木造の旧校舎と小さなコンクリートの新校舎。

 山のふもとに位置する運動場はとてつもなく広く、裏山に繋がる校舎裏の林にはフェンスすら無かったから、そこから登校することだってできたの(今の治安状況や社会通念では考えられないセキュリティよね)。

 教室には磨りガラスに、レトロ石油ストーブだとか、今じゃ見られないものがたくさんあった。

 生徒数は1クラス、たしか26人くらい。

 それが学年で2クラスしか無かった。

 つまり、とっても田舎ってこと。

 だからそんな人が少ない環境じゃ、もちろんマイノリティも確率的にいないに等しくて―。

 その中学校に通う14歳のゲイの男の子は、

「たぶんオトコが好きなオトコなんて、この町には自分しかいない」と確信していた。

 そんな悟りきったような中学生があたい、もちぎよ。

 あたいは後々、隣町の高校に通い、腐女子友達とBLを語り合ったり、ゲイの同級生ができたり、事情により売春を始めてさまざまなゲイの大人と出逢ったりと、だんだんと多様な人々を知ることになるんだけど。

 ともかくこの当時は、マジモンの田舎でゲイ1人で寂しくクローゼットに閉じこもった日々を送っていたわ。友達こそいたけど、みんな異性の話ばっか開けっ広げに話すから、あたいはますます内心の孤立を深めていた。

 まず前述の通り、当時は姉と母とあたいの3人暮らしで。

 あたいには父親の記憶がほぼ無かった。

 あたいが小学校に上がった時くらいに、父ちゃんは自殺したの。借金ができて、偽装離婚した後の話だったらしいわ。詳しい事情はあまり分からないけどね。母ちゃんもあたいには話したがらなかったから、あたいも姉ちゃんから軽く聞いた程度だ。