「駅伝は、ミスのないチームが勝つ」

 近年、繰り返し言われてきた格言である。大エースがいればそれに越したことはないけれど、それ以上に各選手がミスなくたすきを繋ぐことこそが、勝ちへの近道。

 近年のスピード駅伝では、派手な区間新記録よりも、全選手が区間上位でしっかり走ることの方が大切なのだ。

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 事実、前回の箱根駅伝で優勝した東海大の区間賞はわずかにひとつ。

 2位に敗れた青学大が4つの区間賞を獲得したのとは対照的である。青学大は4区と5区のたった2区間の失速で、苦汁をなめることになった。

前回大会では、東海大が青学大の5連覇を阻止して、初の総合優勝を果たした ©文藝春秋

東海、青学、駒澤、東洋、國學院 “5強”それぞれ強さと脆さ

 ところが、出雲駅伝、全日本大学駅伝を終えたいま、今シーズンの大学駅伝を振り返ると、今季はこの「ミスのないチーム」が存在しない。大小の差こそあれ、優勝チームであっても流れを崩す走りが目についてしまった。

 全日本の後、あるチーム関係者はこうこぼしていた。

「今季は特に、1つミスがあるだけで優勝争いから一気にシード争いまで落ちてしまう。混戦模様です。上位のチームもどこも盤石という感じではないですし、箱根駅伝も小さなきっかけで大きく順位が変わる気がします」

 そんな言葉の示す通り、シーズン前に“5強”と言われた東海大、青学大、駒澤大、東洋大、國學院大の各校も、2つの前哨戦を通してそれぞれ強さと脆さを見せる形となった。

 東海大は圧倒的な選手層の厚さがある一方で、“黄金世代”と呼ばれる4年生が故障の影響もあり安定感に欠け、その好不調で一気に流れが変わってしまう。青学大と駒澤大は、総じて堅実な走りができるものの、絶対的と呼べるエースがいない。東洋大と國學院大は、エースの爆発力は抜群だが、層の薄さが課題となっていた。

 そんな風に結果的に圧倒的な優勝候補校がいない状況を考えると、2020年の箱根本戦でも各チームに予想外の事態が出てくると考えた方がいいのだろう。仮にそうなった場合、優勝を占う上でもっとも決着に影響を与える区間は――やはり山である。

 そこで、箱根路の最大の特徴である5区と6区の山区間から“5強”の各校を見てみると、まず、上りに大砲を備えるのが東海大と國學院大だ。

「区間賞と総合優勝を狙う」東海大・西田

 昨季の王者・東海大は前回大会で5区を走り区間2位だった西田壮志(3年)がここまで絶好調。出雲で区間2位、全日本で区間賞と平地の走力が去年よりかなり成長している。大きなレースでの失敗がほとんどなく、チームでもエース級の活躍を見せている。本人も山への意気込みは十分。

「今までは力のある4年生に頼ってきていた部分があったので、今季は先輩たちに恩返しができるような走りをしたいです。箱根は山一本で考えていますし、区間賞と総合優勝を狙っていきます」

前回大会では5区を走り区間2位だった東海大・西田壮志 ©︎文藝春秋