長年、受験指導をしてきた私から見ると、成績不振の原因の多くは、「間違った勉強のやり方をしている」ことが挙げられる。中でも勉強のやらせすぎが多い。そういう親の多くが、「自分は努力をして成功をつかんだ」という経験者だ。高学歴のカズマくんのお母さんが、量にこだわるのも、自分はたくさん勉強をしてきたから結果を出すことができたと思い込んでいるからだ。
だが、成長途中の小学生の子供は無理が利かない。夜遅くまで勉強をさせれば、そのダメージは翌日に必ず響く。教育熱心な親は「間引きをする」という発想がない。
習い事のやらせすぎは「遊び」の機会を奪う
やらせすぎは勉強に限らない。近頃は幼い時からたくさんの習い事をさせる親が増えている。インターネットの普及で情報があふれている今、子育てに関する情報に振り回されてしまう親が多いのだ。
「東大生のほとんどは幼い時に公文とピアノを習っていた」と知れば、目の前にいるわが子の興味などお構いなしに教室に入れる。「4年生から始まる人気受験塾に入れたいのなら、低学年のうちから席を確保しておかないと入れなくなってしまう」という噂が流れれば、われ先にと入塾させる。なんでも早く始めるのが有利という風潮が、以前にも増しているように感じてならない。
習い事をさせるのが悪いと言いたいのではない。子供が関心を示せばどんどんやらせていいと思う。だが、やらせすぎには注意が必要だ。なぜなら、幼い時からの習い事の詰め込みは、子供の自由を奪うからだ。
子供は遊びや生活を通して、いろいろなことを学ぶ。鬼ごっこ一つをとっても、鬼に捕まらないようにするのはどうしたらいいのか、遊びをもっと盛り上げるには、どのあたりにいるとおもしろくなるのかなど、考えて行動する。また、子供同士の遊びには喧嘩がつきものだ。そういう時にどうしたらいいのか考える機会も得られる。判断力、問題解決力、予想力、想像力、表現力など、遊びを通じて身につくものは多い。その機会を奪うこと自体が、私は教育虐待だと思っている。