11月1日、大学入試改革における英語民間試験導入の延期が発表された。萩生田文科大臣の「身の丈」発言に非難が集中したが、もともと数々の問題点が指摘されていた。いまになって大手メディアがその問題点を整理して解説しているが、本来ならもっと早くに報道すべきだった問題だ。

今年1月のセンター試験。機器の配布を待ち、英語のリスニング試験に臨む受験生 ©共同通信社

東大は昨年夏に問題点をすべて洗い出していた

 英語民間試験導入によってどんな問題が生じるのかについては、昨年7月12日に東大のワーキング・グループが発表した答申が網羅的でわかりやすい。これをまさに「論理的思考」というのだと私は思う。このおよそ2カ月後に東大は入学者選抜において実質的に英語民間試験の成績提出を求めないとの方針を発表した。

●東京大学入学者選抜方法検討ワーキング・グループ答申(2018年7月12日) 
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400096214.pdf

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 少なくともこの時点で、短期的には解決不可能と思われる問題点の数々が洗い出されていたにもかかわらず、文科省はそれを無視して改革のごり押しを進めていたのだ。その結果の、今回の破綻である。

 11月5日に行われた衆院文部科学委員会で参考人質疑には、英語民間試験を運営するベネッセコーポレーションや日本私立中学高等学校連合会、全国高等学校長協会の代表者、そしてかねてより英語民間試験導入への懸念を訴えていた大学教員らが招致され、「反省会」の様相を呈した。

 文科大臣は今後検討会議を立ち上げこれまでの経緯を検証するとしている。そのなかで責任の押し付け合いが始まるのはいたしかたないとして、文書の改竄などが行われないことを祈りたい。

●2019年11月5日 文部科学委員会
https://www.youtube.com/watch?v=bsf9mpblXBg

英語の次は「国語記述問題」だ

 文科省がごり押しを進めているのは英語民間試験導入だけではない。英語民間試験導入延期をきっかけに、今後大学入試改革の各種構想がドミノ倒し的に破綻する可能性がある。