以下がもともとの構想の主な点である(アルファベットや数字の番号は筆者が便宜上付けたもの)。
<A:2020年度の大学入試改革で予定されていた主な変更点>
(1)センター試験を廃止し、代わりに「大学入学共通テスト」を実施する
(2)「大学入学共通テスト」の数学と国語には記述式問題が3問ずつ出る
(3)「大学入学共通テスト」の英語ではリーディングとリスニングが100点ずつの配点となる。また民間試験も併用する
<B:2024年度の大学入試改革を目指して検討されていた主な変更点>
(1)「大学入学共通テスト」の英語をなくし、英語民間試験に完全移行する
(2)「大学入学共通テスト」の国語の記述式問題の解答の文字数を増やす
(3)「大学入学共通テスト」の地理歴史・公民分野や理科分野等に記述式問題を導入
(4)「大学入学共通テスト」の複数回実施
(5)「高校生のための学びの基礎診断」の本格実施
今回A(3)の英語民間試験導入が2024年度以降に見送られた。単なる準備不足だけでなく、構造的な無理が指摘されており、おそらく2024年度以降も導入は不可能になったと考えたほうがいい。つまりB(1)も実現しない。
さらに今後は、A(2)の国語の記述式問題導入に関する議論が活発化するはずだ。衆院文部科学委員会で参考人質疑が行われた同日の2019年11月5日には、野党による文部科学部会で、高校や予備校関係者への意見ヒアリングが行われ、特に国語の記述式問題導入をめぐり、設問そのものが無茶、自己採点が無理、公平な採点が非現実的などの問題点が指摘された。
●2019年11月5日 野党文部科学部会
https://www.youtube.com/watch?v=0MxGpmoOJYw&feature=youtu.be
国語の記述式問題導入が巻き起こすであろう混乱については私も「英語だけじゃない…大学入試改革の『国語記述式問題導入』の害悪」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68154)に書いた通り。2020年度の導入はこちらも見送られるのではないかと、現時点で私は推測する。そうなると、A(2)も実現しないことになる。だとすると、B(2)もB(3)も不可能だ。B(4)も、高校での授業進度の問題から、大学入試が学習指導要領の制約を受けている限りは非現実的だ。