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中高年ひきこもり61万人については?

「中高年のひきこもりが増えているのは自然なことかな、と思います。今の中高年が小中学生のころは、学校のいじめにしても、今ほど『いじめはよくない』というふうに取り上げられず、『いじめられる側に問題がある』という考え方がすごく強かった。当時は、学校側に体罰が事実上許されていたし、今以上に個性が『負けないこと』という時代だった。

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 もちろん、今の若い人たちには、今の時代の生きづらさがあると思うけれど、昭和とか平成初期の学校で軍隊教育的なことが行われたり、仕事でも長時間労働を押しつけられたり、苦しいことを強制されることが多い時代だった。だから中高年のひきこもりが増えたのは当たり前の結果なのかな、と思います」

 香取さんはひきこもりが増えている要因として、軍隊的な学校教育や長時間労働を強いる職場環境など、個人に裁量権のない社会の存在を指摘する。自由がなく、息苦しいことに我慢しなければならない空間が広がっているとの示唆は、あくまでひきこもりの発生因が社会にあることを強調しているようだ。この社会システムの陥穽を問い、変革を促さなければ、中高年ひきこもり問題は解消に向かわないのではないか。今後、これは本質的な議論になってくるだろう。