第二次世界大戦でナチス・ドイツとソビエト連邦が繰り広げた、空前絶後の戦い。規模もさることながら、人種主義などのイデオロギーに基づく「絶滅戦争」として民間人にも大きな犠牲をもたらし、ホロコーストのきっかけにもなった凄惨極まりない戦場の姿を、最新の研究動向を踏まえて概説した新書が好調だ。
「独ソ戦は日本人にはあまり馴染みがない題材ですが、人類にとって重要な経験であり、その実像は広く知られるべきものだと考えていました。以前からこのテーマを扱った新書を作りたかったのですが、問題は著者選びです。アカデミックな訓練をしっかりと受けた戦史や軍事史の専門家は、実は日本にはなかなかいらっしゃらない。そんな中、独ソ戦に関する海外の研究書を地道に訳し続けている著者を知り、お声がけしました。別名義で小説も書かれていて、読み物として面白い歴史書を書ける稀有な方である点が決め手でしたね」(担当編集者の永沼浩一さん)
目指したのは、独ソ戦をめぐる従来の「定説」を排し研究のスタートラインに立てる本。初学者向けに、図版や用語解説も充実している。
「30代・40代の読者に多く読まれています。ゲームの影響もあるようですが、それだけではなく、若い方を中心に、歴史学の一分野として戦争を知ろうとしている人が増えている感触がありますね」(永沼さん)
2019年7月発売。初版1万2000部。現在8刷7万部