日本のビジネスパーソンは、デジタル技術が完全に浸透した〈アフターデジタル〉の社会をイメージできていない。一方、中国はいち早く適応しつつある。その中国を拠点とするコンサルタントと、気鋭のIT批評家が、強い危機感で世に問うた1冊が、じわじわと部数をのばしている。
「著者からは当初、中国のデジタルビジネスをテーマにした本を提案されました。ですが、日本のビジネスパーソンは未だシリコンバレーに学ぶ意識が強い。中国の実情を肌で知る人の危機感は、そのままでは上手く伝わらない。そこで著者の提唱する〈アフターデジタル〉という言葉を前面に出し、そのコンセプトの先進地域として中国社会や、中国企業の描くビジネス戦略を取り上げています」(担当編集者の松山貴之さん)
たとえば、キャッシュレス決済が普及すると、個人の膨大な行動データが日々収集される。生活の利便性を考えると、その流れは不可避だろう。だが、集まったデータを私有財だと考え、利用を制限する規制を作るか、公共財として共有し、よりよいサービスへと結びつけるか。国家や企業によるデータの扱いには、議論の余地がある。そんな刺激的な論点が盛り沢山だ。
「〈アフターデジタル〉の時代への理解が広まり、究極的には本書の議論が過去のものとなる。それが著者たちの願いかと」(松山さん)
2019年3月発売。初版4000部。現在10刷5万6000部