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伝説の特撮番組「ウルトラファイト」は何がスゴイのか

唐沢なをき×唐沢よしこ×岩佐陽一 鼎談

note

よしこ 妙にシュールな回もありますよね。キーラー※がリンゴ食べ続けていきなり泣き出す、みたいな。

※ウルトラファイト版の名称。他のウルトラ作品では「キーラ」と表記される

唐沢なをきさん、唐沢よしこさん。よしこさんが持っているのはウーのソフビ人形。©文藝春秋

唐沢 後半はアングラ演劇っぽくなりますよね。そういうのが好きな人の意見が入ってきたんじゃないかなあ。

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岩佐 熊谷さんが当時ATG(日本アート・シアター・ギルド)にハマってて「ああいうの、うちでも撮りたいね」って。リンゴの回なんかまさにそうですよ、熊谷さん自身の想いが詰まってる。熊谷さんが「あのキーラーは僕なんです」とおっしゃって、「怪獣に託されても……」と思ったんですけど、アリだな、と(笑)。

唐沢 (笑)。別にそれが嫌だったわけではなく、番組の雰囲気が変わっていく様子も「いいぞ、もっとやれ」と思いながら観てました。

再現は不可能。あの時代だから生み出せた

岩佐 不満だったのは、ウルトラ側はセブンしか登場しないところ。あれだけ怪獣は出てくるのに……。後に、熊谷氏に訊いたら、2説あったんです。1つは、アトラク用ウルトラマンのぬいぐるみがなかった。もう1つは、当時は「戦え!ウルトラセブン」という続編の企画があって、この前哨戦としてセブンだけがフィーチャーされていた。真相は分からないですが……。

唐沢 どっちも面白いですね!……ちなみに、ずーっと後で、「ウルトラスーパーファイト」というビデオ作品が出たんですよ。新撮編を意識した、怪獣たちが戦うコント集なんですけど、これがちょっとしっかり作りすぎてて笑えなかった。「頑張りすぎだよー」って。