1970年~71年にかけて放送された「ウルトラファイト」。過去作品のバトルシーンを切り出して再編集し、当時のTBSアナ・山田二郎氏の実況解説をつけて仕上げた、円谷プロ制作の特撮番組だ。尺も約2分30秒と異常に短い。そんな“異色作”に、ギャグ漫画家・唐沢なをきが愛を注いだコミック『ウルトラファイト番外地』が電子書籍として復刻される。

 なぜ「ウルトラファイト」は一部の人々を惹きつけてやまないのか? 唐沢なをきさん、唐沢よしこさん、特撮・アニメライター・岩佐陽一さんに、「ウルトラファイト」愛を存分に語ってもらった。

唐沢なをきさん(中央)、唐沢よしこさん(左)、岩佐陽一さん(右)。© 文藝春秋

少年時代、病院のベッドの上で衝撃を受けた

――「ウルトラファイト」との出会いを教えてください。

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唐沢なをき(以下、唐沢) 小学生のとき、盲腸で入院・手術することになって。学校を休んでベッドでテレビを観てたら、突然流れてきた。北海道(唐沢さんの出身地)は平日のお昼に放送してたみたいで、普段は学校に行ってたから知らなかったんです。観た瞬間、「こんなにウルトラにハマっている俺が知らない番組があったなんて……」と驚いた(笑)。

岩佐陽一(以下、岩佐) 私はキングジョオ※の回を初めて観ました。あれで「乱暴」って言葉を覚えたんですよね。船を持ち上げて投げることを「乱暴」だと思って、船のオモチャを大人に投げつけて「らんぼう、らんぼう」って言ってたみたいです(笑)。

※ウルトラファイト版の名称。他のウルトラ作品では「キングジョー」と表記される

唐沢 ファイトに夢中になると、色々面白い言葉を覚えるよね。山田二郎さんの、子供に語りかけるのではない、アナウンサー特有の語彙がどんどん出てくる。乱暴な怪獣のセリフが、べらんめえ口調というか、あまりお上品ではない言葉が次々に出てくる。子供心にフィットしたなあ。